東日本大震災・被災地のひとり親世帯に対する、行政支援はほぼ皆無

―― そうした事業に、政府から補助金が出たりするのでしょうか。復興庁の予算を見ると平成23年度補正予算計上分で14兆円もあるようですが…。

赤石 それが残念ながら、出ないのです(苦笑)。岩手県では、「インクルいわて」という団体がシングルマザーの就労支援を行ったり、「itap」(Iwate Try Again Project for single-mothersの略。アイタップと読む)という団体が、先ほどお話ししたサロンを運営していたりします。被災地でひとり親が困難な状況にあるのに、行政からの支援がほぼ皆無であったため、見るに見かねて作られた団体です。

 「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の被災地支援も、こうした団体も、国際協力NGO「オックスファム・ジャパン」から事業の計画作りや活動資金をサポートしてもらっています。オックスファム・ジャパンは「被災地で困難にある女性を支援する」という揺るぎない信念を持っているので本当にありがたかったです。

―― それにしても、行政は何をやっているのでしょうか?

赤石 行政のほうは「それなりに予算はつけている」と言うでしょうね。もともと日本のシングルマザー支援は、第二次世界大戦に召集された兵士の夫を亡くした、戦争未亡人支援から始まっています。今もその構造は変わっていないので、行政のシングルマザー支援事業には、現場のニーズとギャップが生じやすくなっている、という実態があります。

―― 最後に読者にアドバイスやメッセージをお願いします。

赤石 地震や津波などの天災は、またいつか、必ず起きるでしょう。そういうとき、子どもを持つ親として、避難することや生き延びることを最優先に考えるのはもちろんです。

 日経DUALの読者は問題意識が高く、行動力もあると聞いています。皆さんには、ぜひ、避難所の運営メンバーになっていただきたい。

 避難所運営は地域の中高年男性が担うことが多く、そのために、女性や子どものニーズをくみ取ってもらえなかったり、後回しにされたりしがちです。働くお母さん、お父さんが運営に参加することで、自らのニーズを取り入れた避難所運営を実現していただきたいのです。

 皆さんは弱者ではない。平時には他の親と積極的にコミュニケーションを取って自分達の手で、子育てしながら働きやすい地域を作り、緊急時には仕事や培ってきた地域力を生かして、再生を担う一員として活躍してほしいと思います。

■赤石千衣子(あかいし・ちえこ)さん

しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長。1955年生まれ。非婚のシングルマザーになり、シングルマザーの支援活動に参加。反貧困ネットワーク副代表。社会的包摂サポートセンター運営委員。編著書に『母子家庭にカンパイ!』『シングルマザーに乾杯!』『シングルマザーのあなたに』(すべて現代書館)、『災害支援に女性の視点を!』(共編著、岩波ブックレット)ほかがある。