保育園ママ・パパとの関係は、小中学校に進学してからも役立つ

―― 小学校は想像がつきますが、中学校でも、役に立つのですか…。

「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」への電話での問い合わせに答える赤石さん
「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」への電話での問い合わせに答える赤石さん

赤石 例えば、不登校になったある男子高校生の話です。思春期で親には何も話さなかったそうです。困っていたら、保育園から一緒だった娘さんのお母さんが、学校で起きた出来事を全部知っていて、事情を教えてくれたといいます。何でもお母さんに報告する娘さんだったんです。

 おかげでその不登校の高校生の母親は息子が学校に行きたくない理由が分かり、冷静に対応することができました。情報ってものすごく大事です。

 そうそう。実はここ(東京・神保町のしんぐるまざあず・ふぉーらむのオフィス)の入り口に、ある日突然、高校生の男の子が立っていたことがありました。学校に行っていないことがお母さんに知られてしまい、怒られたという理由で、家出してきたんです。以前、1回だけ来たことがあったのを覚えていて「ここなら、このおばさんなら、大丈夫かも」と思って、来てくれたんでしょうね。

 彼は私の自宅とオフィスなどに、計1カ月滞在していました。風邪を引いて熱を出したときに「お母さんに連絡するわよ」と言って家に帰すことができました。同じ家出をするにしても、危ないところでなく、こんなふうに知り合いのところに行けると、親も安心できるのではないでしょうか?

―― ひとり親にもふたり親にも役に立つお話ですね。ところで、これまで培ったシングルマザー支援のノウハウを、東日本大震災の復興支援に生かしていると伺いました。

赤石 はい。放射能被害を逃れるため、福島県から東京に避難してきた母子家庭に対して、住居、仕事、子どもの就学について個別相談などの支援を行っています。また、被災したシングルマザーに聞き取り調査も行いました。

 興味深いのは、同じ立場にあるシングルマザーが集まって、自分の気持ちを話すサロンの効果です。少人数のグループを作り、同じ経験を乗り越えつつある先輩シングルマザーに司会役をしてもらいます。

 最初のうちは、夫との関係や今後のことなど、どうなるか分からず暗闇の中にいるような状態の方も「自分もこんなふうにやっていこうか」と思えるようになっていきます。サロンに来たときは、すごく緊張した顔をしていたのに、帰るときには笑顔になっている。自分自身で、自分に力を付けることができるようになるのです。

 これを専門家は「エンパワーメント」と呼びます。自分の人生に希望や夢を持ち、主体的に生きられるようになることは、支援をするうえで一番大事だと思います。