日本には、働きながら子育てする環境が整っていない

―― シングルマザーとシングルファーザーの直面する課題の根っこには、同じ問題があるように思えます。父親は長時間労働で家計を支え、母親は家事・育児を引き受けつつ補助的な労働に就く。この形態は、夫婦を形成しているときはうまく機能していても、どちらかがいなくなると困難に陥ってしまう…。

赤石 結局のところ、問題は働きながら子育てする環境が整っていない、ということに尽きるのだと思います。残業ありきの働き方、子どもが熱を出したら仕事が立ち行かなくなり、ひどい場合はクビになる。病児保育は徐々に広まってきましたが、まだ都市部中心で皆が使える状況ではない。共働き家庭の皆さんが「綱渡りだ」と感じるその感覚を、ひとり親は、まさに一人で背負っているのです。それも毎日、毎日。

―― 保育園や学校で、今やひとり親家庭の方は珍しくありません。共働き家庭の保護者が、友達として、何かできることがあれば教えてください。

赤石 『ひとり親家庭』には「地域でおせっかいを増やしたい」と書きました。例えば休日に誘い合って、親子で公園に行ったり、バーベキューなどをしたりすることがあると思います。そういうとき、声をかけてもらえると嬉しいです。家庭の経済状況にもよりますが、できればお金をかけずに楽しいことを企画してほしいですね。

 以前受けた相談で「保育園で孤立感が強い」という方がいました。保護者で開く飲み会の会費が高いので、ほとんど行けない、というのです。最近「バリアフリー」という概念が広がってきました。段差など物理的なバリアだけでなく、経済的なバリアをなるべく小さくして、参加しやすくなるといいな、と思います。

 ところで逆に質問があるのですが、最近の働くお母さん・お父さんは、同じクラスの子も自分の子と一緒にお迎えしたりしますか?

―― 私の周りではあまり聞かないような気がします。ただ、50代以上の働くお母さんからは、よくそういう話を聞きます。

赤石 20年以上前になりますが、うちの子どもが保育園に行っていたころは「ちょっと今日、間に合わないから、うちの子も一緒にお迎えに行ってもらえない?」みたいなことをよくやっていました。一緒に迎えに行って、夕飯も食べさせちゃう。大変に思えるかもしれませんが、子ども同士で遊んでくれるから、親は結構助かったりもします。

 今の親御さんは、他人に迷惑を掛けてはいけない、という気持ちが強いですが「自宅で一緒に遊ぶ」というハードルを越えると、後々まで、楽なんですよ。保育園での関係は地域で長く残りますから、小中学校に上がってからも、助かります。