血圧低下や意識障害を伴うのが「アナフィラキシーショック」

Q.アナフィラキシーとはどんな状態ですか?

A.複数の症状が急速に進行している状態です

 複数の症状が同時に出て、急速に進行していく状態をアナフィラキシーと言います。じんましんが出て、吐いて、咳をしていれば、これは既にアナフィラキシーです。

 2013年の文部科学省の調査では、小中学生の0.5%がアナフィラキシーを起こした経験があります。アナフィラキシーに、血圧低下や意識障害を伴うのがアナフィラキシーショックで、生命が危ぶまれる状態です。薬剤やハチに刺されてアナフィラキシーを起こすケースもありますが、小児の場合はほとんどが食物によるものです。

Q.アレルギーの子が持っている「エピペン®」とは何ですか?

A.成分はアドレナリン。アナフィラキシーの補助治療剤です

 アナフィラキシーの進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤(アドレナリン自己注射薬)です。太ももに強く押しつけるだけで薬液が筋肉内に注射され、本人や保護者はもちろん、園や学校の職員が注射をしても医師法違反にはなりません。

 アナフィラキシーショックを起こす可能性がある人が携帯する薬で、全国で2万7000人の学童がエピペン®を持っています。日本小児アレルギー学会の指針では、「エピペン®が処方されている患者で、アナフィラキシーを疑う場合、下記の症状が一つでもあれば使用すべきである」とあります。

<消化器の症状>
●繰り返し吐き続ける●持続する強い(我慢できない)お腹の痛み
<呼吸器の症状>
●のどや胸が締め付けられる●声がかすれる●犬が吠えるような咳●持続する強い咳込み●ぜーぜーする呼吸●息がしにくい
<全身の症状>
●唇や爪が青白い●脈を触れにくい・不規則●意識がもうろうとしている●ぐったりしている●尿や便を漏らす

アレルギー反応が出たら、注意するのはアナフィラキシーと呼吸器症状

Q.アレルギー反応が出たときはどう対処すれば良いですか?

A.軽度なら様子を見ても構わないが、重度は適切に受診のタイミングを見計らう必要があります

 軽度なら、基本的には症状がおさまるのを待っても構いません。うがいをして口の周りを拭き、かゆみがある場合は冷やしても。症状が何分続いたかを記録し、皮膚の状態を撮影しておけば受診の際に役立ちます。

 適切に受診のタイミングを見計らう必要があるのは、前述のアナフィラキシーと呼吸器症状です。呼吸器症状が進むと、最悪窒息の可能性もあるためです。例えば、喉がイガイガする程度なら大丈夫ですが、ゼイゼイと苦しそうだったり、呼吸困難感が現れたりしたら要注意。すぐに救急に掛かる、場合によっては救急車を呼んだほうがいいでしょう。エピペンⓇฺがあれば注射します。

Q.食物アレルギーは年齢が上がると軽くなりますか?

A.鶏卵、牛乳、小麦アレルギーは、3歳で5割、6歳で9割が克服できます

 鶏卵、牛乳、小麦の食物アレルギーを持つ子どもは、3歳で5割、6歳で9割が食べられるようになります。

誤った診断や親の思い込みで、食べられるのに除去してしまうケースも

Q.食物アレルギーはどのように診断されるのですか?

A.問診と血液検査、皮膚テストで総合的に診断します

 まずは問診です。何を食べて、どれくらいの時間で、どんな症状が出たかを聞けば、私達専門医にはある程度診断がつきます。例えば「初めて卵を食べて、10分後に全身にじんましんが出てゼーゼーしている」これは問診で確定診断できます。

 一方、「初めて卵を食べたら、口の周りにちょっとポツポツが出た。その後お腹も緩くなった」。これでは本当に卵が原因なのかどうか判断がつきにくい。さらに血液検査や皮膚テストを行い、その値を確認しても判断がつかない場合は、再び食べたときに同じ症状が出るかどうか「再現性」を確認します。

 血液検査や皮膚テストは絶対ではなく、陽性でも食べられたり、陰性でも食べられなかったりする場合があるため、最終的には臨床的なエピソードで診断します。

 安易に検査結果に基づいた「過剰な食物アレルギー」が増加中です。実際は食べられるにもかかわらず、保護者の判断で除去を続けてしまうケースも多いですね。