こんにちは。武蔵野大学講師の舞田敏彦です。第1回の記事では「反抗期」についてお話しましたが、これが高じてわが子が非行に走りはしないかと、ちょっぴり心配な親御さんもおられることでしょう。凶悪な事件の報道も多いですしね。

 未成年者による法の侵犯行為を総称して「非行」といいますが、非行は家庭環境と密接に関連しているといわれます。家庭生活の有様が、子どもの人格形成に強い影響を及ぼすからです。今回はデータを使って、1.非行少年にはどういう養育態度の親が多いか、2.家族の親密度と非行にはどういう関連があるか、という問題を考えてみようと思います。

 まずは1.の問題です。警察庁の『犯罪統計書』によると、2012年中に刑法犯で検挙された14~19歳の少年は、6万5448人となっています(刑事責任を問える最低年齢は14歳)。およそ6万5千人の少年が御用となったわけですが、彼・彼女らの保護者の養育態度はいかがだったのでしょう。母親の養育態度は、以下のように判断されています。

 イ)放任 … 13,705人(20.9%)
 ロ)拒否 … 286人(0.4%)
 ハ)過干渉 … 988人(1.5%)
 ニ)気紛れ … 684人(1.0%)
 ホ)溺愛 … 1,191人(1.8%)
 ヘ)いずれにも該当せず … 48,594人(74.2%)

 養育態度の歪みとして5つのカテゴリーが設定されていますが、まあいずれにも該当しない「フツー」の養育態度の母親が大半です。しかし5人に1人が「放任」と判断されており、「溺愛」がその次に多くなっています。

非行少年の親の養育態度は「放任」と「溺愛」が多い

 このデータの解釈をする前に、もう少し分析を深めてみましょう。非行の多くは万引きですが、殺人や強盗のようなシリアスなものもあります。非行少年の母親の養育態度としては「放任」と「溺愛」が相対的に多いのですが、この2つのカテゴリーが全体に占める割合を罪種ごとに出してみました。強盗で検挙された少年は592人ですが、このうち母親が放任的態度の者はどれほどか、溺愛的態度の者はどれほどか、という統計です。

 結果をビジュアルなグラフでお見せしましょう。横軸に溺愛の比率、縦軸に放任の比率をとった座標上に各罪種を位置づけてみました。図1をご覧ください。十字の点線は平均値です。

資料:警察庁『平成24年の犯罪』
資料:警察庁『平成24年の犯罪』

 青線で囲まれているのは、放任の比重が高い「放任型」の罪種です。強盗、恐喝、殺人など、アグレッシブなものばかりですね。強盗少年の母親の半数は「放任」と判断されています。あと一つのクラスターとして「溺愛型」も検出できます(ピンク枠)。強姦やわいせつといった性犯罪です。