企業は社員にエネルギーを「与える場所」にならなければいけない

 107歳まで生きる場合、人はそのうちの70~80年間を働くことになります。それはまるでマラソンのようなものです。短距離ではなく、長距離ですから、かなりのエネルギーが必要になります。企業はエネルギーを吸い取るのではなく、社員にエネルギーを「与える場所」にならなければなりません。

 私達が競争に打ち勝っていくためには、常にイノベーティブでいなければならないのです。低コストで戦うベトナムやフィリピンといった国とは違い、日本などの諸国において、企業に必要なものはイノベーションとクリエイティビティーなのです。

 では私達はどのようにして、そのエネルギーを維持していけばよいのでしょう。その際、私達にとって大事になってくるのが、家庭と職場の両方です。

 心理学者として言えるのは、家と職場はつながっているということです。

 これが、マイナスのつながりの場合もあります。

 例えば、朝、家から出る時に、自分の夫と子どもとの関係、または義母の関係で罪深い気持ちを持つこともあるかもしれません。日本においては、女性は英国より多くの家事をこなさなければならないと聞いています。子どものこともやらないといけない。または、自分は夫に愛されているのか、義母に愛されているのかもとても気になるかもしれない。

 職場から帰宅しても、上司に対する不満でいっぱいになっているかもしれない。なんで、職場のみんなは私を十分に評価してくれないんだろう。なぜ私はもっと面白い仕事ができないのかと思ったりするかもしれない――と。これが負のサイクルです。

 特に、日本は長時間労働が多い。なぜそこまで長く仕事をするのか、私はあまり理解できないほどです(苦笑)。しかし、将来は、その傾向も変わってくるでしょう。なぜなら、生産性やクリエイティビティーと長時間労働には、相関関係がありませんから。なぜここまで長時間働かなければいけないのか。そこが日本人にとっては課題となるでしょう。

 家庭と職場の関係を、ぜひプラスのサイクルにシフトさせてください。

 家庭では自分が受け入れられていると感じる。8時間も睡眠が取れた。夫や友人からサポートを得ていると感じられる。職場でもいろんな学びがあり、それを家に持ち帰ることができる。

 私にも子どもがいます。子どもは職場の話を聞くのが好きなんです。母親が働いていることに対しては、子どもはプラスに感じているものなのです。

 では、なぜマイナスのサイクルが生まれてしまうのか? それは、パートナーとの関係性、企業でのサポート体制などが関係しています。

 家庭と職場の関係をプラスのサイクルにするためには、仕事を8時間の間でやり遂げることが必要でしょう。

 あなたのその仕事は、減らすことはできないのか、と考えてみる。家でできる仕事もあるかもしれない。会社以外の場所でもできるかもしれない。もっと遊びの要素を仕事に取り込むことはできないのか。自然のリズムを取り入れられないのか。1年くらいは仕事を離れて勉強したり、子どもの世話をしたりできないか――。

 そういった柔軟な発想が必要です。こういうことを受け入れていかなければ、80歳まで働き続けるのは難しいのです。

 そんなの無理、と思った方もいらっしゃるでしょう。まずは、今抱えている課題を解決するために、自らの働き方を変えてみてはいかがでしょうか?