羽生 この本(『中学受験する? 公立に行く? わが子に合う進路の選び方』)にも「子どもを伸ばす親とダメにする親の典型例」が書いてあって興味深いですけれど、子どもが弱っているとき、どういう言葉をかけたんですか?

尾島 俺もどっちかというとNGワード系なので、やっぱり腹が立って「何でできないの?」とか言ってしまう(笑)。でも、それでも乗り越えてやったというところを逆に褒めてあげたいですね。こんな本を作っているけれど、そんなにきれいでいい言葉で伸ばしてあげられてはいなかったよ。俺の知らないところで妻がやっているのかもしれないけど。ここに書いてあるように、夫婦の役割はこうだからと、なかなかその通りにはできない。

一番大切なのは本人のやる気。親の期待に応えるため無理していれば心が折れることも

羽生 受験をやめようと思ったことはなかったですか?

尾島 子どもがつらそうにしているときもあったけれど、それ以上に本人にやる気があった。一番大事なのは、やる気があるかどうか。本人が絶対受かりたいなと思ってその気になっていればやるよ。でも、親の期待だけだったり、もしくは親の期待に応えようと無理しているんであれば、どこかで折れてしまうかもしれないけれど。

羽生 息子さんは何がモチベーションになったんですか?

尾島 本人は大学に行ってラグビーがやりたかった、少なくとも当時は。俺はこの大学に行ってラグビーしたい。そのためには、手っとり早くその大学の系列の学校に合格すれば、そこの大学でラグビーできるからって。それだけでやってたね。

羽生 強い目的意識があったんですね。

尾島 鉄道好きな子が鉄道のために何か考えて行動するのと同じように、うちの子はラグビーやりたかったわけ。

羽生 しかし11歳ぐらいで大学の話まで考えられるというのは、かなり人生設計ができていたんですね。

尾島 いやいや、全く子ども的だよ。Jリーグが好き、サッカーが好きで、ワールドカップに行きたいというのと同じで、自分がやっている大好きなスポーツの一番かっこいいところでやりたいと。ラグビーは大学ラグビーが華だからね。

羽生 単純な理由でも、目指す大学があるのは幸せなことですね。

尾島 そう、ある意味すごく子ども的な発想だよね。そんなことで学校を選んでいいのかと反論する人もいるかもしれない。もっと将来の職業を考えた方がいいと言う人もいるかもしれない。でも、こんな理由で学校を決めたっていいと俺は思う。どこの学校に行くかが問題なのではなく、そこで本人は何を経験するかが問題なわけで。 

中学・高校での子どもの成長、私立中と公立中の違いなどについて、次回に続く。

(構成 日経DUAL編集部 市川史樹)

~日経Kids+(キッズプラス)の本~

『生きる力ってなんですか?』

●Amazonで購入する

『中学受験する? 公立に行く?』

●Amazonで購入する