羽生 最後の1年は夫婦でタッグを組んで勉強指導を?

尾島 勉強の面倒を見る役割は俺だったよ。

羽生 そうですか。勉強は尾島編集長で、奥さんは何だったんですか?

尾島 お弁当を作ったり、生活の支えのような部分です。

中学・高校・大学と、受験の意味はそれぞれ違う

羽生 男性同士だから、勉強の進め方の感覚が合うところはありましたか?

尾島 直感的にそれは感じた。やっぱり男の子と女の子は明らかに脳の構造が違うと思うので。男ゆえの幼さとか、男ゆえのちんぷんかんぷんなところはあるから、それは「男の子時代」を経験している夫のほうが理解しやすいでしょう。

羽生 12歳程度で男子が受験するって、私の小学生時代を振り返ると、よっぽどませてる男の子が増えているなぁと思います。

尾島 それはいろんな考え方があって、そのころだからこそ伸びるという見方もある。大学受験の受験とはちょっと違って、中学受験は若干ゲーム感覚がある。中学、高校、大学ごとに、それぞれ受験の意味が違うと思う。私たちがやってきた大学受験の感覚を中学受験に持ち込んで「ませている」と思うのはちょっと違うかな。

羽生 受験の意味が違うんですか?

尾島 うん、違う。中学受験は小学生に合っていることをやっている。算数なんかは特にそうだと思う。背伸びしすぎたことをやらせているわけではなく、算数は小学生に向いている内容をやっている。その点、理科や社会なんかは、そこまでやるかなという思いはちょっとあるけれど…。

 でもよく考えれば、例えば電車好きの子がね、うちのガキもそうだったけど、よくそんなことまで覚えてるなっていう事細かなことを全部知っていた。あれが日本史になったと思えば、まあ、同じことをやっているにしかすぎない。何でも覚えたいものは覚えてしまうというところは、子どもならではと言えるかもしれないね。

「かわいそうなことさせている」というのは親の思い込みかもしれない

羽生 私は小学生が夕飯も家で食べずに、星が出るころまで勉強するっていうのは自分が経験してないので「かわいそうなこと、無理なことをさせている」と思っているんですが、それは実態とは違うんでしょうか?

尾島 確かに親の思いとして、そういうものはあるかもしれない。でも実は子どもは子どもでみんなとご飯を食べるのが楽しかったりする。親は家族で食べなきゃとか思うけどさ、子どもは子どもで楽しいんだよね。

 だから、それは思い込みかもしれない。子どもは子どもでその状況の中の楽しさを見つけていくので、そこまで考えなくてもいいのかなとは思うな。ただ、親としてそういう感情が芽生えるのは仕方ない。俺なんかもそうだったし。まあ、あったかくないからね、弁当は。

羽生 尾島家での受験勉強期間中に、「あ、子どもが折れそうになっちゃっているな」というシーンはあったんですか?

尾島 それは幾らでもあるよ、点数が取れないときとか。自分が思ったように点数が取れないときは、押し入れの中に顔を突っ込んで泣いてたよ。そういうの見ると、やっぱりかわいそうになってくるんだよね。どうして自分はこんなにダメなんだと思って泣いてたりする。ああいうのを見ると、親も悩んじゃう。