コーチに言われた身体の部位で転がるボールをトラップしろっていうことだったんですね。言われた瞬間、「え!?」みたいな(笑)。ビックリしている間にボールが股の間をすり抜けて行ったんですけど、「あれ? サッカーって面白いな」って思ったんですよ。何だかわからないけれど、「そんな考え方もあるんだ」って。転がってくるボールを「肩!」って言われたら肩で、「お尻!」って言われたらお尻トラップしたり。

 そんなトレーニングをして、子どもたちが楽しいと思ってヤル気を出すフックになるようなこと、つまり、サッカーの面白さや楽しさを伝えてくれたんですよね。その時のチームで僕は後々、発想力が養われていったんじゃないかと、今振り返ると思います。

自主性を育てるために子どもを観察してサポート

 何でもそうですけど、楽しむことから入ると、自分でどんどん「アレもやりたい」「これもやりたい」となってくるじゃないですか。そうなると、「じゃあ、今度は強いチームに入ってみようか」などと変わってくると思うんですよね。自主性が育ってくると、子どもの探究心とか向上心っていうのはスゴいので、あとは勝手に育っていくというような気がします。

 僕の父親との関わり方を振り返ってみても、子どもの自主性を育てるためには、「最初から答えを出しすぎない」というのがコツなんじゃないかと思っています。ヒントだけパラパラっと撒くみたいな。父親は、ある程度、道を作ってくれた上で「その枠のなかであれば、どこに振れてもいいよ」といった形を作ってくれていたんじゃないかと思っています。

 うまくいかないときには「ちょっと、お父さん見てよ」って言うと、「ああ、いいよ」と言う。父親はサッカー経験があったワケじゃないのですが、たぶん、陰でサッカーの勉強をしていたんでしょうね。「右足だけじゃなく、左足でもボールを蹴れるといいよね」とか、ヒントをパラパラっと撒くというか、いいあんばいで接してくれていたと思います。

 やっぱり、我が子が何かに夢中になっているなら、「何ができて、何ができなのか」「何に興味を持っているのか」といったことをしっかり観察してあげるべきです。そして、子どものことを“知る”ということが本当に大事。そして、言葉がけをしてあげるということも忘れてはいけませんよね。

 子どもって、親が自分に興味を持ってくれたりすると、スゴく嬉しいじゃないですか。忙しくてなかなか見てやることができないというのもあるかもしれないですけど、ちょっとしたところで「お前のこと、見ているんだよ」と感じてもらえるように、いいヒントを常に与えてあげられる関係を作ろうとする努力が必要だと思います。

 そうすると、子どもは「自分に興味持ってくれているんだ」と感じて、何かができるようになったら「見てもらいたい」といった気持ちがどんどん芽生えてきますよね。そうなると、ヤル気スイッチが入って、勝手に子どもが成長していくというか、興味のあることを勉強したり、練習したりするようになるんじゃないかと思うんです。