男性は10%できそうならやる 女性は110%自信がないと手を挙げない

―― 女性を登用する際の方法として、一定のポジションに一定数の女性を割り当てる「クオータ制」の是非が議論になっています。どうお考えですか?

ジャッジ もともと私はクオータ制に反対でした。でも最近は賛成に変わりました。

 確かに、クオータ制で昇進する人の中には、あまり能力がない人もいるかもしれません。でも、自然に増えるのを待っていたら時間がかかり過ぎます。期間限定でクオータ制を取り入れ、女性も上を目指せることが若い世代に伝わったら、その後は自然に増えていくはず。その後、クオータ制をやめるという具合に、社会変革の道具として期間を限定して使えばいいのではないでしょうか。

 女性とリーダーシップについては、社会だけでなく女性個人も変わるべきです。特に完璧主義をやめるべきだと思います。男女ともにたくさんの部下を見てきて、そう感じます。女性は成功見込みが110%あると、ようやく「できます」と言います。一方、男性は10%でもできそうなら、仕事を引き受けます。こういう風にして男性はどんどん経験を積み、女性と差が開いていく。少しくらい不安でも、まずは「やります!」と手を挙げる大胆さを女性にも持ってほしいです。

―― ご自身はハードワークで長時間労働を厭わず、成果を出し続けてきました。一方「普通の働く親」はワーク・ライフ・バランスを求める傾向が強いです。これは甘い考え方でしょうか?

ジャッジ 欧米の若い世代も同じように考えていると思います。1970~80年代はキャリアを求める人が多く、90~2000年代以降はバランスを追求する人が増えています。これは良いことだと私も思います。 

 もし、すごく高いポジションに就きたいなら、一生懸命に働く必要がありますが、技術の進歩で、多くの仕事は会社にいなくてもできるようになっています。パソコンやiPadを活用して、家にいても一生懸命働くことはできます。企業はそういう非伝統的な働き方をする人達を正当に評価すべきだと思います。

 私は「働けるのは、ありがたいこと」と思っています。以前、ある人に「あなたの夢は何ですか?」と聞かれて「デスクの上で死ぬことです」と答えたことがありますが、実は今でも本気でそう思っています。一生懸命に仕事をして、重要な意思決定をして、部下を育て、人の役に立てるのは、素晴らしいことです。そんな私を息子も誇りに思ってくれているのです。

(取材・文/ジャーナリスト・治部れんげ、撮影/稲垣純也)