アベノミクスの成長戦略を決める産業競争力会議。「残業代ゼロ」のニュースがメディアを舞った。在宅勤務など、場所や時間にしばられない柔軟な働き方ができれば、出産や子育てもしやすくなる。しかし、長時間労働や収入減は困る。政府が目指す、日本経済を成長させる働き方とは? 日本初のテレワーク専門のコンサルティング会社(株)テレワークマネジメントを設立。企業の在宅勤務導入支援や、国や自治体のテレワーク普及を数多く手がけてきたテレワーク推進の第一人者・田澤由利さんが解説します。

「休む」のではなく「柔軟に働く」という選択肢

 「テレワークって、残業代ゼロになるんですか?」

 ある企業の社内研修でのこと。20代の若い社員からこう質問された。

図1 安倍首相は働き方改革の一環としてテレワークの推進にも力を入れている(首相官邸HPより)
図1 安倍首相は働き方改革の一環としてテレワークの推進にも力を入れている(首相官邸HPより)

 テレワークとは、場所や時間にしばられない『柔軟な働き方』のこと。その説明に対して、「残業代ゼロ」という言葉が出てきたのは、政府の産業競争力会議で「時間ではなく成果で評価する新しい働き方」が議論され、「残業代ゼロ」報道がなされていた時期だったからだろう。(図1)

 「政府で議論されている『時間ではなく成果で評価する新たな制度』は、自分の裁量で仕事ができる一部の人に限られ、適用するには多くの条件がある。テレワークは、より多くの労働者のための、働き方の新しい選択肢です。残業代が出る働き方をしている人は、テレワークをしても同様であるべきだと私は考えます」と説明した。

 日本の多くの会社は、労働時間制を採用している。そして、働く場所や時間は、雇用者である企業が決めている。このため、子育てや親の介護など、仕事以外の理由で「出社しにくい状況」になると、仕事を休まなくてはいけない。もちろん、休むことも必要だし、そのための制度も用意されている。しかし、休めない、休みたくない状況の人にとっては、「ワークをとるか、ライフをとるか」という辛い選択をしなくてはいけなかった。

 そこで、あらゆる労働制度においても、場所と時間という縛りを無くし、「柔軟に働く」という新しい働き方が求められている。