借金を減らすよりも手元資金を確保すべき

「借金は少なければ少ないほど良い」と多くの人が思い込んでいる。それ自体は間違っていないが、一度借金を抱えてしまった後に無理な繰り上げ返済をすれば、資金繰りの悪化を招く。

「今一番のリスクは奥さまの収入です。先ほど伺った話では奥さま自身がかなりもらっているとお考えの一方で、収入が半減する可能性もあると。つまり収入は上にも下にも動く、まさにリスクがある状態なわけですよね。大変失礼な言い方になりますが、今はそのリスクがかなり良いほうに振れているといえませんか?」

「おっしゃる通りだと思います。給料は自分でも高いと思います」

「かなり余裕があると思っていましたけど、そうでもないということですか?」

「今は余裕があっても、それがずっと続くかどうかは別の話です。奥さまの収入減少を仮に50%減と見積もれば、マイナス700万円です。これだけで毎年の貯蓄額と同じです。加えて2軒目の家が空き家になればローンの返済だけで月に12万円、年に144万円のマイナスになります」

「だんなさまの収入減少リスクもゼロではありませんし、今後はお子様の教育費も確実に増えます。お子さまももう1人欲しいという意向もありますし、これらのリスクがいくつか同時に起こった場合、今の600万円という貯金額はあまりに少なすぎます。奥さまはリスクがあるから繰り上げ返済をする、とおっしゃっていましたが、お2人の場合は逆に、リスクを抑えるためには繰り上げ返済はしない方が良いんです

 繰り上げ返済のし過ぎで貯金が少ない……こういう家庭はかなり多い。収入や支出がまったく上下しないのならそれでも良いが、家計でリスクがゼロという事はない。リスクを吸収するためには貯金がバッファー(緩衝材)となる。例えば貯金も借金もゼロの状態と、貯金と借金がどちらも100万円の状態を比較した場合、利息の負担を無視すれば実質的にはどちらも同じだ。しかし収入・支出の波を乗り越えるには、手元の資金は生命線となる。つまり借金を減らすことを優先して貯金を減らし過ぎるのは危険なので、資金繰りが優先されるということだ。

(繰り上げ返済と資産運用のレッスン・相談は次回記事に続く)

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