この投信の運用担当者は2006年から継続して担当。運用担当者を含めたチームは計10人で全員が調査担当と投資判断の業務を兼ねる。多くの運用会社の調査は業種別など分担制だが、ザ・ジャパンは担当分野を決めずに年に計2500件程度を自由に企業取材。各自が広い対象の中から相対的に魅力度の高いテーマを選び組み入れる。

 ただし好成績が評判になって投資家の資金が急に流れ込み、昨年4月には純資産(投信の規模)が急拡大した(前ページのグラフB参照)。5月以降の成績はこの投信では珍しく、市場平均を若干だが下回った。

「独自の銘柄を選んで勝つスタイルが、規模の拡大で難しくなったのでは」との心配も一部で聞かれる。好成績だったいくつかの投信が、規模の拡大後に成績が鈍化することは過去にもよく見られた。規模が大きくなると、運用担当者がいいと思う銘柄だけで全体を構成することが難しくなり、いい銘柄の比率が薄まってしまいがちになるからだ。

 ただしザ・ジャパンの運用担当者は「多く組み入れた銘柄が昨年春まで大きく上がった反動で一服したことが、成績が一時伸び悩んだ要因だった。今はまだ運用がやりにくくなるほど極端に大きな規模とは言えない」と答える。規模拡大後も好調を維持できるかどうか注目の時期だ。

運用担当者が長期に担当し続けるメリット

 やはり「ファンド・オブ・ザ・ディケード」に選ばれた日本株の「ライジング・サン」は、規模の小さな小型株が対象だ。

 多くの中小型ファンドは上場直後で注目度の高い「旬の銘柄」に投資しがち。しかし、そうした銘柄は注目が薄れれば急落することも多い。

 ライジング・サンは経営体質が安定したリスクの少ない銘柄を選ぶ。運用担当者は「そのうえで、競合の撤退や規制緩和など、近い将来に割安さが解消すると確信できた銘柄を選ぶ」と話す。運用担当者は投信ができてから一貫して携わっている。

 このように運用担当者が長期で担当し続けていることは、今回の受賞投信の多くで共通だ。

 外国株部門で選ばれた「エーベスト・イー」は、割安株投資で知られる米ハリス・アソシエイツ社が運用を担当。ファンドマネジャー2人とも、やはり10年近く継続して担当している。

 アナリストなどのチームが、特定の業種や国に特化せず、詳細な企業取材をもとに自由に選ぶ体制も、「ザ・ジャパン」「ライジング・サン」と似る。現在の組み入れ銘柄の構成比の第2位はスイスで、これも珍しい。

 これまで「10年で勝ちぬいた投信」の特徴をざっと見てきた。読者は「じゃあ、こうした投信を買っておけば、この先10年も勝てるはずだ」と思うかもしれない。確かにそうなるかもしれないのだが、残念ながら「絶対」とは言い切れない。