今春、きめ細やかな独自のスタイルで待機児童ゼロを実現した千葉市は、さらに子育てさまざまな子育て支援策を打ち出している。第1回「待機児童ゼロを実現できた理由」第2回「働いている奥さんが好き」に続き、今回熊谷俊人千葉市長の共働き子育てについて聞いた。(聞き手は日経DUAL編集長・羽生祥子)

羽生祥子編集長(以下、羽生)  保育所の送りは市長ご自身でやられているそうですね。

熊谷俊人市長(以下、熊谷) はい。今日も送ってきましたよ。昔は妻の通勤時間が長かったので、自分1人で子どもを送っていましたけれども、今は妻と一緒に朝2人で送っています。

羽生 それは平日毎日?

熊谷 はい。普段から。妻は育休明けで今年の4月から職場復帰していますけれども、僕が朝いられるときは常に送っていますよ。

羽生 2人で園まで送るって手厚いですよね。

熊谷 下の子が4月から保育所に行きはじめて、やっぱり泣くわけですよね。大人1人で子ども2人を連れていくと、妻もテンパっちゃう(笑)。大人が2人いると、子どもにとっても保育所生活に慣れるまでの衝撃が和らぐのじゃないかなと思いました。

実際に送り迎えをやって見えてきたこと

羽生 市長としてのご活動をしていて、「共働き子育て真っ最中」の首長さんは多いですか?

熊谷 あまり多くはないと思いますよ。子育てをする前も子ども支援の重要性については、何となくわかった気になっていたんですが、自分で実際に保育所への送りなどをやっていると、保育士の役割、保育所の何が重要なのかということもよく分かりましたね。

 例えば「おたより帳」。僕は以前、「毎日ノートでやりとりするのも保育士は大変だろう。その間は寝ていたほうがよっぽどいい。そういうのはいらないんじゃないの?」と言ったんです。すると「違うんです、これが大事なんです」と保育士に言われたのですが、「あ、そう」という感じだった。

 それが1カ月、2カ月、3カ月と送りをやってみて、とても大事なことだと。「おたより帳」は保育士からのメッセージでもあるというのがよく分かりました。

羽生 それがお母さんの命綱になるときもあるんですよね。

熊谷 そうです。例えば今、送迎保育ステーションが注目されています。子どもを駅で預けたら、そこから保育所に送迎してくれるというサービスです。あれは親が実際に自分の子どもを見てもらっている保育士と接触をしなくなる危険性がある。それじゃただ預かるサービスですよ。

 親が保育士と向き合うことに意味がある。私は千葉市で送迎保育ステーションをやるにしても、2歳未満は絶対にやらせないと言っているし、保育の現場の人間はそれを分かっています。

 でも、やっぱりとりあえず待機児童を減らそうと思っちゃうと、送迎保育ステーションを作って、ゼロ歳児とか1歳児でもそれをやっちゃうわけですよ。僕はそれは絶対にやるべきじゃないと思います。