ユニセフによる子どもの幸福度の調査によると、「あなたは孤独を感じることがありますか?」という質問に対して、「孤独である」と回答した子どもは日本では29.8%に達しました。残念ながら日本はOECD加盟国24カ国中、最も孤独感が高いという結果でした(2番目に高い国の約3倍)。

 冒頭で紹介したように、子ども達は「仲間達と楽しい時間を過ごしたい」と感じている。私達、保護者は熱心に子育てをしているつもりですが、本当に子ども達が望んでいることや、楽しいと感じられることをしてあげられているのでしょうか。これが、私が自分を含め、皆さんに問いかけたいことです。

親が子どもに与えたいと考えているのは、仲間と多種多様な経験

 放課後NPOアフタースクールでは、保護者の方に「子ども(小学生)に身に付けてほしい力は何ですか?」と尋ねるアンケートを取りました。

 すると、「自分の意見・考えを伝える力」「他者を思いやる力」「人の話を聞く力」という3つを挙げる保護者が多かったのです。高い学力や身体スキルなどといった表面的な能力を望む声よりも、他者の中で自分をどう表現するかが問われるコミュニケーション力を最重要視する声が大きいのです。

 おおむね、多くの保護者の皆さんも同じ考えなのではないでしょうか。同様に、「では上記のような力を育むうえで必要な機会は何だと思いますか?」と聞くと、ダントツで「多様な体験を重ねる」「多くの仲間と過ごす」が挙げられました。つまり、「多くの仲間と多様な経験が必要だ」、と考える保護者が多いわけです。

 しかし、今の日本においては、これがなかなかできていないのが現実です。とりわけ都市部の子どもほどその傾向にあります。

 子どもを支えるインフラが主に「学校、家庭、塾」になっている。だからこそ、この3つ以外の場所が必要だと考えている親が多く、特にお母さんはそう感じる傾向があります。

 そこで私達が注目したのが学校施設です。放課後の学校はほとんど使われていません。そこに子ども達の居場所ができれば、まず何より安全です。そして学校施設は、グランド、体育館、理科室、音楽室、図工室、家庭科室と子ども達のやりたいことのほとんどをかなえられる“場所資源”でもあります。

 新渡戸文化アフタースクールでは、学校が持っている様々な施設を利用して、子どもの個性を伸ばすためのプログラムを毎日複数実施していますが、何より重視しているのは、子ども達に「何がやりたい?」と聞くことです。剣道や料理、バイオリン、建築、デザインといった、今あるカリキュラムはみんな、子どもの声から生まれました。とにかくたくさんのプログラムを用意すればいいというのではなく、子ども達のやりたいことを尊重し、多くの仲間と過ごして、互いによいところを認め合うことが大切だと考えているためです。