定員はなし、学童の「待機児童」はなし

 そもそも、世田谷区が早くからこの一体化を推し進めることになったキッカケは何だったのか?

 「それまでの学童クラブでは、児童館など小学校外にある施設で行われていました。ある程度のスペースはあるものの、どうしても限られた人数の狭いスペースになってしまいます。しかし、BOPと統合することで、校内に新BOP室を作れば移動する必要もなくなります。より安全な校内の校庭や体育館といった施設を利用しながら、限られた子どもだけでなく、幅広く異年齢間も含めた交流を図ることができるというのが、大きな理由です

 新BOPになって学童クラブに通っていた子どもたちにとって変わったことは「通っている小学校から移動しなくてもいい、というところは大きな違いです。安全がそのぶん、確保されることになります。小学校の校庭や体育館を使用することもできますので、よりダイナミックに遊べるようになったというメリットもあります」と言う。

 全児童対策事業と学童の一体化によって、学童の保育的な機能が失われるのではないかといった心配も保護者からは出ていたそうだが、「保育機能としてよく言われる、おやつですとか出席管理、連絡帳などといったものは、学童クラブ単体の事業としてあった頃から引き続き残して今も継続しているといった状況です」と言う。

 そして、親にとって新BOPの最大のメリットといえば、学童クラブの待機児童がいないということだろう。

 「BOPも学童クラブも定員を設けておりませんので、保護者の就労条件を満たしていれば、学童クラブに誰でも登録できるようになっています」

 新BOPは小学校と連携しているので、2教室分の新BOP室だけではなく、校庭や体育館といった小学校の広いスペースを子どもたちが使うことができる。

 受け入れ人数に余裕のない自治体の学童では、いくつか習い事を入れると、必要度が低いとみなされて学童を辞めるように促されるといった話も聞くが、世田谷区の新BOPでそういったケースはないようだ。ただし、定員を設けていないため、登録者が100人前後に達している学童クラブもあるようだ。

 「入学したての1年生のときには学童クラブに登録しておいて、子どもの成長に応じて自力で習い事などに行けるようになれば徐々に増やしていって、BOPのみに移行するといったケースが増えています。正確な数字は今すぐには出ませんが、感覚として、2年生になるときに学童クラブの登録数がまあまあ減って、3年生になる時にはかなり減ります。3年生になっても残っている子どもたちも夏休みまでで終わりという子がほとんど。子どもそれぞれの成長の度合いですとか、途中で習い事を始めたりということもあるので、そのあたりの組み合わせで移行していくのだと思います。逆に、途中から学童クラブに入ってくる子どももいます」