「8歳までに鍛えるべきは『地頭(じあたま)』。キャンプなどの野外活動で得られる原体験が多ければ多いほど、『人間味豊かな100点』を取ることができるのよ」。尾木ママこと、教育評論家・尾木直樹氏が熱く語る「子どもを塾通いさせるよりも、親がすべきは家族キャンプ」の真意とは――。東京都港区の会場で開催された、コールマン ジャパンの「家族キャンプ」に関するプレスセミナーで取材しました。
(※日経DUAL特選シリーズ/2014年7月収録記事を再編集したものです。)

就学前の早期教育は、やるなら相当な覚悟が必要よ

尾木ママこと教育評論家・尾木直樹さん
尾木ママこと教育評論家・尾木直樹さん

 教育熱心な親御さんの間で「早期教育」が流行っているわよね。難しい漢字が読めたり、逆立ちしてすごい速度で歩けちゃう、跳び箱の6段が跳べてしまう……といった子ども達を見ると「すごい! ぜひ、うちの子も」って思ってしまう方がいても、仕方がないかもしれません。

 でも、ちょっと待って。

 そんな子ども達が秀でているのは確かだけど、これは脳の一部に刺激を与えて「偏った能力」を発達させているだけの場合も多いのよ。

 ゴルファーの勝みなみちゃんみたいに、おじいちゃんが責任を持って、付きっきりで能力を伸ばし続けてくれればいいわ。でも日本の社会全体を見渡すと、そんなエリート教育は難しい。指導者がいないのよ。“○○式”と呼ばれる早期教育を施して幼児期に特別な能力を身に付けても、小学校に入ったらほとんどが元の木阿弥。優秀な指導者が導いてくれなければ、小学校3~4年になれば、特殊な能力なんて消えてしまう。

 そんな例を周りで見たことがある人もいるでしょう? 「できる子だ!」とチヤホヤされていた子が、みんなに追いつかれて普通の子になっていく。その子の挫折感、喪失感が分かるかしら?

 もちろん、早期教育の全てが悪いわけではありません。でも、早期教育を始めるなら、いい指導者を見つけて、その後もずっとお金をつぎ込んで、子どもを「その分野で突出した子」にし続けていかなければならないの。絶対ダメとは言いません。覚悟を決めてから、始めるならいいわ。でも、それはとても大変なこと。今日は、もっと簡単に、子どもを最終的に「デキる子」にしていける方法をお教えします。

8歳までに、できるだけ多くの原体験を

 脳科学は、ここ20年で大きく進歩しています。後でも触れますけれど、日本は脳科学の分野で、他国に比べるとずい分遅れをとっていて、それが教育にも弊害を与えているんです。

 例えば、ボクが子育て世代だった頃は、「赤ちゃんは抱き癖がつくから、抱いちゃいけない」って教えられていました。親は、我慢して抱っこしなかったの。今はやっと他国に少し追いついて、脳科学者だけでなくどこのお医者さんも「いくらでもたくさん抱っこしてあげてください」って言っているわ。

 「早期母子接触」といって、生まれてすぐの赤ちゃんを、ちょっとだけ、お母さんと一緒に居させてあげる、ということもするでしょう? 大好きなパパやママに抱っこされて安心することで、忍耐力や向上心、他人への優しさが自然と身に付くからなんです。こうした基本的信頼感の形成は2歳まで、とも言われています。

 脳のコントロールセンターである一般知能、いわゆる「地頭」を形成する時期は、8歳までと言われているの。地頭を鍛えることは、早期教育を飲み込むくらいのパワーがあるのね。これを刺激して、伸ばしてくれるのが、たくさんの「原体験」だというわけ。

 次のページで、子どもに積ませてあげたい原体験を8つ説明しますね。