もう一つの食育は……自然とふれあうことかな。子どもたちが小さな頃から、田植えなどに連れて行っていました。

 私自身は、そういう自然の中での体験をまったくしてこなかったんです。だから余計に、小さいうちから何かさせてあげたいなと考えていた頃、ちょうど、お願いしている宅配野菜の会社が収穫イベントを主催していたので、申し込んでみました。

 初めて行ったのは、大根の収穫! 生産者の畑で大根を掘って、収穫して。とれたての大根をその場で切って、生で食べさせてくれるのですが、子どもたちは「うまーっ!!」と叫びながら、むしゃむしゃ食べていました。家に帰ると、「お父さん、採れたての大根、食べたことあるー?」と、仕事で行けなかった岸谷に得意げに説明していましたね。

 そのうち、田植えにも行くようになりました。これも宅配野菜の会社経由で申し込みました。5月に田植えして、稲の花が咲く頃にまた見に行って、秋に稲刈りして、稲を干すところまで作業したら、農家さんがお米にして送ってくれるんです。お米が届くと、「皆で植えた新米が来たよー!」と家族で大喜び。その日のごはんはたいてい、炊きたてのご飯とお味噌汁だけ。ご飯のおいしさをしみじみ味わっています。

玄米を手で精米してみようと挑戦! そして、農家の人に感謝

 家で玄米を炊く時は、「これがお米なんだよねー」と言いながら、「自分で精米してみたら?」と、やらせてみたことがあります。家族で薄皮を黙々と、必死でとって白米にしようとするけれど、10粒くらいで全員、ギブアップ。「これじゃおにぎりにもならないよー」なんてお手上げ状態。そして、農家の人に感謝したり。

 正直、私は田んぼの中に裸足で入るのも苦手だし、虫とかも得意じゃない。でも、田んぼや畑に行くと、子どもたちは全然平気で裸足で走り回るし、おたまじゃくしを獲ったり、小さなカエルを連れて帰って学校で飼ってみたりと、すごく楽しんでます。こういう場所は大きくなってからだと気持ち悪がるかもしれないし、純粋に楽しめるのは小さい頃だけかもしれないから、機会があれば田んぼや畑に連れ出していました。母親としては割と必死な思いで引率していましたが(笑)。

 今も機会があれば、土のある、食材が生まれる場所に子どもたちを行かせることがあります。子どもたちだけで行かせるのが奄美大島。家族ぐるみで仲良くしている農家さんがいて、夏休みや、連休みたいに長めにお休みがある時は、「修業に行ってこい!」と息子を送り出すんです。

 小さい頃から畑には慣れ親しんでいるせいか、息子は畑仕事が大好きみたいで、喜んで行きます。

 少し前、トマトの苗を植えるという話を聞いて、助っ人要員で息子を送り出しました。農家さんから送っていただいた写メを見ると、うちの息子、起きてすぐ、寝間着姿のまま苗を植えていて(笑)。

「あのさー、ピーマンって、とってすぐにそのまま食べると、フルーツの味がするんだよね。味が違うんだよ」

 帰ってきて、そんな話をする息子。彼の中で、いろんな感動があったんだろうなと思います。

 本当においしいものを「おいしいよ」と買って与えるのも大事かもしれないけれど、あれこれ説明するより、太陽の下で、五感をフルに使って感じた味や香りは絶対に記憶に残る。そういう感動体験ができる機会を、今のうちに、できる限り与えてあげたいなと思っています。

(ライター/松田亜子、撮影/稲垣純也)