「PISA型学力」というのを聞いたことがあるだろうか。OECD(経済協力開発機構)が、3年おきに実施する、国際的な学習到達度調査「PISA」において求められている学力観のことだ。

中学入試で求められるのは「PISA型学力」

 たとえばPISAの「数学的リテラシー」を調べる問題のサンプルには、画像1のようなものがある。前提として、現在、船舶に凧のような帆を付けて、風力を利用することで、燃料費を削減する方法が開発されているという導入文がある。凧を取り付ける費用と、それによって削減できる燃料費の費用対効果を計算するという問題だ。

画像1 公立教育政策研究所が公表しているPISAのサンプル問題
画像1 公立教育政策研究所が公表しているPISAのサンプル問題

 凧を付けることにより、削減できる燃料は年間350万リットル×0.2=70万リットル。年間0.42ゼット×70万リットル=29万4000ゼットの燃料費が浮くことになる。帆を付けるための費用は250万ゼットだから、250万ゼット÷29万4000ゼット=約8.5年で投資費用を回収できるという計算になる。割合の概念を正しく理解していることを前提に、問題文の中に与えられた条件を組み合わせ、一つずつ筋道を立てて答えに近づいていく力が試されている。

 PISA型学力とは、このように、問題文に与えられた条件やヒントから、自分が持っている知識や技能(計算力など)のうち何が使えそうかを見出し、実際にそれらを状況に応じた形で適切に組み合わせ、活用することができる能力をいうのだ。

 2002年にはじめてPISAが実施され、日本においては、「これこそこれからの子どもたちに必要な『生きる力』を構成する学力だ」と評判になった。裏を返せば、日本の教育は知識偏重型で、PISA型学力に対応できていないという批判であった。しかし実は、中学入試においてはまさにPISA型学力までもが求められていることは、あまり知られていない。