娘夫婦のやり方とぶつかり、泣いた日もある

――娘さんとは少し口論になってもスムーズに仲直りできるようですが、お婿さんとはどうでしょうか?

佐多「滞在中は、やっぱり血のつながりのある娘より旦那さんに気を使います。旦那さんとは一緒に暮らした経験がないですからね。きっと、お互いに気を使っていますね。
 一度、娘とも旦那さんともうまくいかなくなったことがあります。そのころは、孫の病気が長引いて1カ月以上滞在しているときだったので、『お母さん、(我慢も)もう限界だね』って娘が一言。それを機に宮崎に帰りました。確かに、娘夫婦のいろんなやり方が私とは違って、うまくバランスが取れなくなっていたんです。
 そのときは、泣きました…。距離感の取り方もそうですし、娘が私ではなく旦那さんのほうについたような切なさもあって。
どういう距離感がいいのかとても悩みましたが、今は滞在も3週間程度にして、娘夫婦の方針にはなるべく口を出さないようにしてうまくやっています」

――おつらい思いをされたんですね。それで、娘さんはどうされたんですか?

佐多「娘も、実の母だから言ってしまうんでしょうね。考えてみると、私がいない普段は娘と旦那さんで頑張って乗り越えていて、そのやり方があるので、口を出されて嫌なのは仕方ないんだと思います。娘は旦那さんとも私ともその後それぞれ話をして、今はお互いに適度な距離を取れるようになってきましたよ。
 それに私が帰るときには、旦那さんが玄関まで見送ってくれて『お義母さん、ありがとうございました』とちゃんと言ってくれたり、『彼がお義母さんに好きなものを買ってやれって言ったから』と娘が買い物に連れ出してくれたりするようになりました。そういう気遣いが、うれしいですね

――少しずついい距離感が見つかったんですね。

佐多それに、何があってもやっぱり基本は、夫婦で決めていかなきゃいけないですよね。私は一歩引いて、娘達をサポートしていきたいです

元保育士、専業主婦だった母から見た、ワーママの娘とは

孫が入院。昼間は仕事がある娘に代わって付き添い
孫が入院。昼間は仕事がある娘に代わって付き添い

――佐多さんは、産後すぐに仕事を辞められてから専業主婦として娘さん達を育てられたそうですが、今2人の娘さんが残業もしながら働いて子育てする姿をどう思われますか?

佐多自分がしなかったことを娘達はしているんですよね。私は仕事を辞めたからこそ、今、娘達が一番しんどいであろうときに、できるだけ助けてあげたいと思うんです。だから、私は距離が遠くても、自分が必要とされる所に飛んでいってあげようと思っています

――保育士としても、また“ファミサポさん”としても、働くお母さんを見てこられていますよね。

佐多「私は子どもを預けられる立場と、親としての立場の両方を経験しました。働く場所は、お母さんが自分に戻る瞬間でもありますよね。朝、子どもを預けてホッとした様子で職場に向かうお母さん達の背中も見てきました。だから、仕事を辞めて家でずっと子どもを見たほうがいいとは思いません。

 普段、娘達は東京でファミリー・サポートなどの第三者の手を借りて両立しています。そのお礼、というわけではないですが、宮崎にいる間は私もファミリー・サポートの会員として、地元で子育てをしているお母さん達を助けてあげられたら、と活動しています。娘達には、自分で選んだ道だからこそ、今のきつい時期を頑張って乗り越えてもらいたいですね。そのためにできる限りのことを、私もしていきたいと思います

――そのサポートのためなら8時間の距離も苦ではないと?

佐多「来るのは楽しみで仕方ないんですよ。来るたびに小さな言い合いはあったって、やっぱり孫に会えるのが楽しみでまた来ちゃうんです(笑)。できることなら毎日孫を見たい! 孫のそばに住んでいる人が羨ましいです。
 もっとしょっちゅう来たいくらいだけど、普段は宮崎で母の介護があったり、“ファミサポ”の仕事があったりして、さすがにそうもできないので、今後、子ども達がもう少し大きくなって、夏休みなどの長期の休みには少しの間預かれたら、と考えることはあります」

宮崎に孫が来るときは、孫が喜ぶイベントを考えるのも楽しみ
宮崎に孫が来るときは、孫が喜ぶイベントを考えるのも楽しみ

――お孫さんとの時間を本当に大事にされているんですね。

佐多孫を育てることで、自分の子育てをやり直している気分がします。娘を育てているときは無我夢中で、つい頭ごなしに怒ってしまったり、もっと遊んであげたかったと思い残しがあったり。家事の手を止めて、話を聞いてあげられるのも孫だからこそ。孫相手には冷静になれるので、『こうしてあげたかった』と思う育児を改めてやってあげられていることが幸せなんです

(取材・文/岩辺みどり)

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