宮崎に残された祖父も、60歳を過ぎてから家事ができるように

――1回の滞在が3週間程度と長いですが、宮崎に残った旦那様はどうされているんですか?

佐多さん「私が専業主婦だったこともあり、夫は家事が一切できない人でした。でも、孫が生まれてからは、私が長期で上京するのも“かわいい孫のため”とあって、一人で頑張っています。いない間は仕事が終わって自分でスーパーに行って食べたいものを買ってきたり、定食のようなものが食べられるお店を見つけたりし始めました。最初は冷凍食品なども活用していましたが、今では、『魚焼きたいけどどうするんだ?』『味噌汁作りたいんだけど』と上京中の私に電話をかけてきて、調理法を聞いてきます。60歳過ぎてからの成長です。まだまだ初歩ですけどね。『俺のおかげで上京できるんだぞ』とか言いますしね(笑)」

娘2人の家を往復。孫に取り合いされるうれしい悲鳴

――東京では、2人の娘さんの家を行き来されるそうですが、両方にお孫さんがいらっしゃるんですよね?

佐多さん「そうなんです。長女のところに2人、次女のところに1人。みんなまだ10歳以下なので手がかかりますね。でも、物事がよく分かるようになってきたので、『バアバ、今夜はこっちに来てね! あっちばっかり行かないでね』と両方の孫で取り合いになってきてしまって(笑)。うれしい悲鳴なんですけど、なるべく同じ日数泊まるようにしないと孫に怒られちゃうんです。
 保育園のお迎えや週末の公園などで、近所の方々とも仲良くなり、『おばあちゃん、また来てるのね! ランチしようよ』とお声を掛けていただくことも増えて、茶飲み友達もできました。裁縫も得意なので、娘の家にあるミシンを使って孫の通園バッグやら靴袋やら作ります。娘達は『作ってほしいものリスト』も用意していますね。滞在中はやることいっぱいなんです」

滞在中は、孫達全員と一緒に遊びに行くこともある
滞在中は、孫達全員と一緒に遊びに行くこともある

――日々忙しそうですね。2家族を往復するのも大変ではないですか?

佐多さんそれが、1カ所に滞在しないことでストレスをためないで済むという利点もあるんですよ。娘のところとはいえ、やっぱり長くいるとぶつかることも増えます。私は保育士をしていたので、子どもの成長やしつけ、遊びなどつい“こうすべき”と思うことを言ってしまうんですね。保育園のお母さんなど他人にだったら口を出さず、うまいアプローチができたのに、娘にだと直球で口を出したくなってしまって…。娘だから、孫だからこそ言ってしまうんですが、娘も母親に言われるとカチンとくるらしく、『分かってるわよ!』ということになってしまう。だから、数日ごとに家を移動したり、週末には近くに住む親戚や友達に会いに行ったりするのがちょうどいいんです」

母と娘、よかれと思ったことが口げんかに…

――娘さんだから助言したいというお気持ち、よく分かりますが、母に言われるから頭に来てしまう気持ちも分かります。きっと、他の方から言われたら、すんなり聞けたりするんですよね。

佐多さん「そうなんでしょうね。地元にいるときは、ファミリーサポートの提供会員として地域の子ども達のお世話をしているのですが、そこでは適度な距離を持って助言したり、話を聞いたりしてあげられるんですよね。でも、娘だと、つい色々気になってしまうんです。オモチャを与え過ぎじゃないかとか、子ども達の習い事や予定を詰め過ぎじゃないかとか…。特に男の子の孫2人は、小さいころはよく熱を出し、入院も経験するほど体が弱かったので、私は未然にできるだけ病気を防ぎたいんです。でも、娘は色々予定を入れがちだし、パパも『男の子は強くあるべき』という感じで厳しく育てる方針で、時々気になってしまうんですよね」

――育児経験や保育士経験があるからこそ言ってあげたいことと、実際の距離の取り方は難しいですね。

佐多さん「結局言い合いになってしまって『もう来てやるもんか!』って思うときもあります。でも、やっぱり来てしまうんですけど(笑)。

 その助言の仕方や距離の取り方には、一時期すごく悩みました。悩んで泣いた日々もありましたよ…。でも、地元の友達や孫をもつ先輩達に相談したら、『今と昔は違うのよ。本人達の想いもあるから、やっぱり口はあまり出さないほうがいいわ』と言われて、やっと納得しました。それでも、今でも口を出しては、カチンときちゃったり(笑)。まあ、実の娘だから言えてるんでしょうね。これが、嫁の子どもだったら、きっと黙ってます」

――お互いに母娘だから正直に言ってしまうことがあるんでしょうね。よくぶつかってしまうことにはどんなことが多いですか?

佐多さん「先ほどのオモチャの多さや習い事の忙しさもそうですが、やっぱり一番私が気にかかるのは孫の健康や安全です。なるべくケガをしないように、なるべく病気にならないように、と私はつい先に先にとかばったり、安静にさせたりすることが多いんですが、娘達は結構『あのくらい大丈夫よ』とあっけらかんとしていることも多くて。
 思えば、私も自分の子どもにはそうだったんでしょうが、孫だと“預かっている”という意識が強くて、もっと心配なんですね。しかも、一度私が目を離した隙に孫が鉄棒から落ちて頭を打ったことがあるんです。もうそのときは、泣きながらタクシーで救急病院まで飛ばしました。何ともなかったんですが、それ以来輪をかけて心配で目が離せなくなりました。
 だから、そういう健康や安全について私が口を出して、ぶつかることはたまにありますね」