以前にも書いたが、息子を風呂に入れるのはわたしの仕事である。

 どうしてもそうしたかった、というわけではない。沐浴させるのをヨメが怖がった。ま、ある程度は腕力もいることでもあり、ならば男児たるわたくしめがやってさしあげようということになったのが、そのまま入浴につながったのである。

 ただ、嫌々やらさせている、というわけでもない。

風呂に入れた瞬間の、息子の恍惚の表情がたまらない

男2人、至福の瞬間(とき)
男2人、至福の瞬間(とき)

 風呂に入れた途端、息子・虎蔵(仮)はなんともいえない恍惚の表情を浮かべる。あふん、とか、うふう、とか、そんな感じ。それが実に愛らしく、ついつい毎晩見たくなってしまうのである。

 おめでたかった、と笑うしかない。

 いつだったか、極寒の中、仕事から帰って来たわたしは、まず虎蔵(仮)と一緒に風呂に入ることにした。ホントだったら、すぐさまザブンと行きたかったところなのだが、残念ながら出かけ際に風呂掃除をしていたので、湯船は空っぽである。

 仕方がない。すぐさま給湯を開始する。「お風呂が入りました」と電子音が告げてくれるまではおおむね10分から15分待つことになる。ただ、その日はあまりにも寒かった。なので、わたしは一刻も早く風呂に入りたかった。よって、給湯開始から10分経つ前に、息子を抱っこしたまま浴槽に飛び込むことにした。

 ふへえ~~~~。

 いつもより若干少なめの湯量とはいえ、寒い日の風呂はやはり極楽である。虎は、と見れば、こちらもいつものように恍惚の表情を浮かべている。すると──。

 ジョ、ジョ、ジョ~。

 男子ならば誰もが聞き慣れた、水の放物線が水面を叩く、あの特徴的な音が聞こえてきた。

 それで、か。それで、だったのか。普段はおちんちんが水没してしまって音が聞こえなかっただけで、お前は風呂に入るたびに放尿ぶっかましてやがったのか。恍惚の表情は、男子にしかわからない放尿時の快感によるものだったのか。俺はそのお湯で顔を洗い、ぷふう~とか満足げな表情を浮かべてしまってたのか。

 てか、最近ヨメが「お肌の調子がいいのよねえ」とご機嫌だったのは、幼児の尿に美顔効果があったからだったのか──。

 世の中には知らないほうが幸せなこともある、というお話でした。