増えつつある他社「夫」の参加

 大日本印刷は2009年に夫婦同伴セミナーを始めた。産前産後休業・育休から復帰する社員を対象にした職場復帰セミナーは以前から開いていたが、参加者は毎回ほぼ全員が女性。彼女たちに仕事と子育てを上手にこなすコツや覚悟をどんなに説いても、働き方の改善に限界があると気づいた。「家事育児を分担すればよいことは、言われなくても分かっている」「研修で学ぶ必要があるのはむしろ夫」。セミナー参加者からこんな要望が相次ぎ、ターゲットを切り替えた。

 ただ自社の社員ではないのでセミナーへの参加は強制できない。当初は会社と妻の思いに反して夫婦同伴は数えるほどだった。内容をよく知らされないままに妻に連れてこられ、研修の間、ただただ憮然と座っている夫の姿も見られたという。

 だがイケメンブームを追い風に夫の意識も高まり、夫婦参加が徐々に増加。今年の29組は過去最多だ。「ワーキングマザー同士は家庭の状況をよく話し合うが、夫はそんな機会がほとんどない。ほかのパパはどうしているのか? 実情を知るだけでも結構刺激になっているようだ」(大日本印刷労務部)

 明治安田生命は2013年から、復職応援セミナーへの夫婦同伴参加を推奨している。3月上旬に開いたセミナーには産休・育休からの復職予定の女性社員12人とその夫3人が参加した。2人の先輩ワーキングマザーが家事・育児をどう分担しているかを説明し、特定非営利活動法人(NPO法人)ファザーリングジャパン事務局長の徳倉康之さんが父親として子育てにかかわる楽しさをアピールした。徳倉さんは育休取得経験者。「あーしなさい」「こうしなさい」といった〝べき論〟ではなく、同性が語る体験談の方が父親たちの心に響くだろうという狙いがある。

 「夫婦とはいえ、互いの将来キャリアを話し合う機会は案外少ない。特に育休中は育児が大変で夫婦で話し合う時間がなかなか取れない。そのまま復職してしまうと、家事・育児をどう分担するかがあいまいになりがち。セミナー参加を互いの希望を確認し合うきっかけにしてほしい」(明治安田生命ダイバーシティ推進室)と説明する。