大手の重工業企業に勤める松島さん(仮名・30歳)は、妻と、家事や育児を完全に等分している。これは、本人の好むと好まざるとに関わらず、そうせざるを得ない状況なのである。
妻が航空会社のキャビンアテンダントをしており、フライトのために家を空けることが多いからだ。妻の担当は国内線で、泊まりの勤務も多く、勤務スケジュールも不規則だ。
「月の半分は、僕が娘の送り迎えからご飯の用意、入浴、寝かしつけまですべてやります。まるで自分が“奥さん”みたいですよ。ほかの旦那さんより頑張っていると思いますよ」と、松島さんは言う。
妻は土日に勤務が入ることもあるので、保育園のない週末は食事の支度はもちろん、娘と一緒に遊んだり、洗濯、掃除、日用品の買い物などもすべてひとりでこなしている。
「妻が職場に復帰してから3カ月が経ちます。この間、自分の自由な時間がまったくなくなってしまって……」と、遠い目をしながらつぶやく。
妻が育休を取っていた間は、家事や育児にはノータッチだった。“育休明け〟から家のことが突然自分の問題になり、やや戸惑っているというのが今の心境だ。
仕事中に、晩ご飯の献立を考える
料理もほとんどしたことがなかったので、レシピ本を見ながら悪戦苦闘を重ねてきた。数ヵ月経った今でこそレパートリーも少しずつ増えてきたが、仕事中も「今日の晩ご飯はなにをつくろうかな?」「料理教室に通おうかな?」などと、ぼんやり考えてしまうのだ。
かたや、妻は仕事に復帰してからというもの、何だか楽しそうだ。子どもベッタリの生活から離れて、まるで水を得た魚のように元気がいい。彼女が元気で明るくいてくれるなら「この生活もいいかな」と、思えてくる。
それなら、いっそのこと「早くこの生活に慣れてエンジョイしちゃおう!」とさえ、思っているのだ。