古代ローマ人が現代日本にタイムスリップする風呂マンガ『テルマエ・ロマエ』の作者である、人気マンガ家・ヤマザキマリさん。斬新なコメディーを生み出したヤマザキさんは、生き方もまた規格外。17歳で単身イタリアへ渡り、極貧生活の中で油絵を学びます。27歳のとき、同棲していた現地男性との間に子どもを授かるもシングルマザーを選択。女手一つでの子育てを経て、35歳で15歳年下のイタリア人と子連れ国際結婚。研究者の夫について、シリア、ポルトガル、米・シカゴ…と世界を転々としながら、子育てとマンガ描きをしてきました。

 現在はイタリアを拠点に(時々来日)生活を送る、ヤマザキさん(ご主人はイタリア在住、息子さんはハワイで大学生)。シングルマザーの道を選んだ経緯や、幼い息子を食べさせるべく様々な仕事に就いたエピソードを振り返りつつ、ヤマザキさんが子育てで大切にしていることに迫ります。

やまざき・まり 1967年東京都生まれ。84年、絵を学ぶために17歳でイタリアに渡り、フィレンツェの美術学校で11年間油絵や美術史を学ぶ。94年、男児を出産し96年にイタリア生活をつづったエッセーマンガでデビュー。同時期に一時帰国し、北海道でイタリア語講師、テレビ局のレポーター、ラジオDJなどを務める。04年にイタリア人文学研究者と結婚。シリア、ポルトガル、米・シカゴなどでの生活を経て、現在はイタリア在住。

『テルマエ・ロマエ』(KADOKAWA エンターブレイン)がマンガ大賞2010を受賞。映画化も大ヒットし、累計900万部超のベストセラーとなる。ほかに、『モーレツ!イタリア家族』『スティーブ・ジョブズ』『地球恋愛』(ともに講談社)『アジアで花咲け! なでしこたち1~2』最新刊『とらわれない生き方』(KADOKAWA エンターブレイン)など著書多数。

――波瀾万丈な人生を歩む、ヤマザキさん。まずは、シングルマザーという道を選んだいきさつを教えてください。

 息子・デルスの生物学的な父親とは、フィレンツェで油絵を学んでいたときに出会い一緒に暮らすようになりました。全く生活力のない、自称詩人で常に生活は困窮していたんですが、同棲して10年経った27歳のときに妊娠が分かって。

――同棲10年で子どもができたら、普通は相手を改心させて結婚しませんかね?(笑)

 「この人の子どもなら生まなきゃいけない」と思うほど、強い絆を感じる相手ではあったんです。好きな人ではあったんです。彼は形のないものを生み出す表現者で、人間としての面白味や深みがあって、絵を描いていた私を触発し続け、私の生産意欲を高めてくれる人でした。

 ただ、とにかく自由気ままで社会性のない人で…。

子どもに生きる楽しさを伝えたいから、分娩台の上で別れを決意

 私と詩人の関係ははたから見ても「これはないでしょう」という状態でした。

 妊娠しておなかの大きな私が、彼と2人でやっていた屋台を1人で切り盛りし、トイレにも行けずに働いて、そのまま歩いて帰ってごはんを作る。でも詩人は帰ってこないという…。

 彼が不在のまま続けていた商売の不渡りも私のところにどんどん届く。美術学校の学生でもあった私は、学校の課題もあるのにもうむちゃくちゃで。とにかく、妊婦の私を気遣うどころか、どんどん不安を運んでくる人だったんです。

 詩人や画家なんていうのはしょせんこんな暮らし、と妄想に浸り続けていたところもあったと思います。だから私たちの生活がボヘミアン的であってもそれは許せたけれど、子どもが生まれればそんなファンタジーは一切通用しませんから。

 我々当事者は舞台の上でドラマティックな演技をし続け、毎日激しい口論やお互いを傷つけまくるけんかをしても許されていたけど、生まれてくる赤ちゃんをそれに巻き込む勇気はなかった。親として、生きていることは楽しいことと幸せなことでいっぱいなのよ、ととりあえずは子どもに見せなければいけないと思ったのです。だから、舞台から降りて、現実の自分に戻さないといけなかった。

 とはいうものの、10年も付き合った仲なので簡単に踏ん切りがつかなかった。それが、わが子に対面した分娩台の上で、直感的に別れる気持ちが固まりました。「はい終了!」と、ガラガラ~と別れのシャッターが完全に下りました(笑)。産んだのは27歳。結婚への執着や焦りも、全くありませんでした。

――強い!

次ページから読める内容

  • 子どもを食べさせるために「10足のわらじ」
  • 日本の生活だと私のいい側面を子どもに見せられない
  • 子育てで大切なのは生き生きとした自分を見せること

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