ここでは彼らは異邦人です。異邦人であることは内輪の理屈に取り込まれにくいという強みと、仲間だとみなされないかもしれないという不安を抱えることでもあります。それはそれでしんどいこともあるだろうけれど、内輪を出たら生きていけないのは脆弱なこと。いくつもの内輪の世界が出会う場所が世界で、自分の居場所は自分で決める、と思える人は自由です。息子たちには、そのように世界と出会って欲しかったのです。

この決断ができたのは、やっぱり夫のおかげです

 空が広い、雲がきれい、夕日が美しい、朝焼けが見事。何度見ても同じ空はなく、日常は驚きに満ちています。海は透き通り、風は香気を含み、鳥の鳴き声が聞こえる。輝く月が夜を照らし、星明かりの下で花が開く。木々は見慣れない形の葉を揺らし、星座は南半球の巡り。似ているけれど、見知らぬ世界。

 こうして日豪を行き来するようになって、あらためて夫の家事能力の高さや、子どもへの接し方の巧みさにも気がつきました。渡豪の際には欠点ばかりが目について、不安が募るばかりだったのに、やっぱりこの決断ができたのは彼のおかげだと感謝。そう、彼が仕事を辞めるなんて思いもしなかったし、稼がなくなった夫をどう尊敬すればいいか、かなり戸惑ったのだけど……

(以下次号に続く)