「僕は自然がいっぱいありそうだからと、英語を覚えたかったのと、日本の友達とお別れするのは寂しいけど、新しい友達ってなんかおもしろそうって思ったから」

 英語を覚えたかった! 新しい友達に興味! そうだったのか……。渡豪のバタバタで、そこまで具体的に話を聞いてなかったな。そこでそばにいた長男に「君はなんで?」と聞いたら、「いや、なんでって、わかんないけど来て良かったー」というざっくりした返事。

“内輪”の理屈にうまく順応することなんて、しなくっていいんだよ

 彼らは公立校の、英語が母国語でない子供たち専用のコースに通っているのですが、いろんな国の子供と不完全な英語でそれなりに会話して、遊んでいます。

 二人ともどういうわけか人見知りをしないので、うまくスタートできたようです。見た目も出身も習慣も全然違う人たちに囲まれて、それぞれに変わっていることが当たり前の環境で、のびのびしている。もどかしいこともあるだろうけれど、表情が生き生きと輝いていて、前よりも逞しくなりました。

 世界は多様で、人と人とはバラバラで、だけど分かり合えることもある、っていうことを彼らには体感して欲しかった。日本人どうしでも、自分と他人はうんと違っているものだし、違っていることは面白くて豊かなことだってことに変わりはないけど、「普通」でないと不安だとか、逸脱しない範囲で個性的であるべきとか、誰かの意図を読んで要領よく振る舞うことが知性だとか、言葉にならない縛りがいっぱいある。同族であることを前提にした内輪の理屈にうまく順応しないとしんどい社会だと思う。私はそれにあまりうまく適応できなかった。

パースの自宅の庭から見える夕焼け。住宅地の向こうは海。インド洋に沈む夕日が空を染めます
パースの自宅の庭から見える夕焼け。住宅地の向こうは海。インド洋に沈む夕日が空を染めます