子ども達が求めているのは絵の落書きクオリティーではない

 勉強会に参加して私が一番変わったのは「迷いなくペンを動かせるようになったこと」。子どもからの絵の評価に気を取られ過ぎて絵を描くプレッシャーが大きかったあのころは、描くのに精いっぱいでその絵を使って子どもとコミュニケーションを取る余裕なんて、正直、ありませんでした。

 落書きのポイントを押さえただけで、親の気持ちに余裕ができます。子ども達が求めているのはやはり、クオリティではありませんでした。パパが描いてくれたことやサササーッとペンを走らせるスピードに、子ども達は「わあっ!」と表情を変えました。

 ですから、ある程度、「このレベルのものが描ければいい、某有名キャラクターを一つだけ描ければOK」など、大人の妥協点を持っておくのも重要ですね。

落書きの楽しさを「絵の評価」で台無しにしない

 ちなみに、落書きをしながら、ただ単に「上手だね!」と言い合うのは避けたほうがいい気がしました。絵の評価をモチベーションにしてしまうのはもったいない。「このネコの名前は?」「この子は何色が好きなの?」など、子どもの豊かな発想力をもっと自由に発揮させてあげられるチャンスは、落書きの中に大いに潜んでいます。

 最後に、わが家のラクガキから生まれたコミュニケーションを1つ紹介します。子どもがスケッチブックにひたすら円を描いていたので「それは何?」と聞いたところ「お部屋!」とのこと。そこで、私が下手くそながら10秒くらいで「ゾウ」や「ブタ」や「カエル」を描いてあげたところ「なんだー、お部屋じゃなくて動物園だね!」と言って、動物達を丸で囲み始めました!

 円だけのスケッチブックに、大人が動物を描き加えることで、子どもは、落書きの世界を「お部屋」から「動物園」に広げました。さらに、その動物達を使って「ほら、ごはんだよー!」「お部屋掃除するねー」「ブタさんお鼻大きいねぇ…笑」など、会話やストーリーが次々と生まれていきました。これが、落書きから始まるコミュニケーションなのか! と実感したのです。