「あなただから」に心が動いて、総菜部門へ
半面、総菜でずっと新人パートを募集していることも知っている。レジからの異動は、苦肉の策であることは、園丘さんにも容易に想像がつく。
それでもやっぱり、首を縦には振れなかった。接客が好きで、ここまで極めて、会社に貢献してきたのだ。「今さら、なんで私が」との思いが拭えない。
ところが課長も、負けなかった。
「『総菜には、レジとは違う面白さがある』のだと、何度も力説するんです。『言われたことを、ただやるのではない、あなたのように仕事に能動的に取り組める人だからこそ、総菜の面白さを感じられると思う』んだって」
他の誰でもない「園丘さんだから」との理由に基づく、信頼する元上司からの異動の打診。最終的には、園丘さんが折れる形で、総菜部門への異動が決定した。
工夫がダイレクトに売り上げに反映。総菜の魅力にはまる
しかし、実はもう一つ、園丘さんの心を動かしたものがある。
「レジは、お買い上げくださった商品を、ただカウントしお金をいただく『待ち』の仕事。でも、総菜は違う。自分の工夫次第で、自ら売り上げを作っていける、能動的な仕事」という、課長からの仕事の説明だ。
「やってみても、いいかもしれない」
がぜん、興味が湧いてきた。そして実際に総菜部門に異動してみて、想像以上に手応えのある仕事だと実感する。
例えば “お買い得”の赤いシールや、“手作り”と記した緑のシール。これを貼るだけで、売り上げが違うのだ。もちろん、シールにウソはない。でも、こんなに違うものかと驚いた。
「シールは、すべての商品に貼っても意味がありません。“お買い得”シールはチラシ掲載商品に貼りますが、雨の日など、その日の天候など状況に応じて“空揚げ”を1つ増量したり、価格を微妙に落としたりなどした商品にも、貼り付けます」
他にも、来客が増えてきた夕方時間帯を狙って“タイムセール”を実施するのも、大変効果的であるという。