男社会だからこそ生きる「女性の視点」
―― 東大工学部から不動産業界へ。瞳さんは、男社会をしなやかに生き抜いている印象があります。
星野 確かに、東大の工学部には女子が1割もいませんでした。私の専攻は都市工学科だったので比較的女子が多くて、2割くらいはいたかな。
中学高校と女子校でしたが、歯に衣着せぬ関係で、逞しく生きていく雰囲気の校風だったので、大学、会社と男性が多い中に入っても違和感はありませんでしたね。
社内も男性が多くて、体育会系の雰囲気がありますが、自分は女性として産まれてきているし、母親になる醍醐味も感じているので、全く気になりません。ただ、「これでおしまい」という明確なゴールのない仕事なだけに、育児中であっても、常にもっともっとやりたいという思いはあります。
今、住宅を開発する仕事をしていますが、立地を見て、マーケット調査をして、ターゲットを設定して、間取りや内容を相談して……と、ディベロッパーは、建物に付加価値を付けてオリジナルなものを作っていく広がりのある仕事で、いくらでも「解」が存在するんです。
―― これから、どんな形で仕事をしていきたいと思っていますか?
星野 今いる住宅の分野にしても、新入社員時代から5年間ほど在籍していた商業施設の分野にしても、自分の生活と密着していることなので、出産後は主婦目線で細かい視点から考えることができるようになりました。台所の収納はこうしたら使いやすいとか、この面材ちょっと汚れが付きやすいとか、自分が感じたことを実現できる。リビングの横に子ども部屋があったら、キッチンに立ったお母さんから子どもが楽々見渡せるように引き戸を設計したり……。商業施設についても、お客さんの立場に立って、女性ならではの思考もできます。
事業担当が決められる範囲が広い会社なので、本当に面白いです。自分もお客さんとして体感できることが多いので、そこはディベロッパーの醍醐味ですよね。
―― ママが少ない職場だと、「主婦として母としてどう思うか?」と周囲から頻繁に聞かれませんか?
星野 そうですね。そもそも住まいにおいては、男性と女性で使い方が違いますから。女性のほうが持ち物も多いし、キッチンに立つことが多いからこその意見もある。
今の会社でやりたいことはまだまだあるので、育児をしながらも少しずつ色々な新しいことに挑戦していきたいと思います。
(撮影/鈴木愛子)