「都心でも大きな公園や広場は意外とたくさんあります。でも、そこを活用していない園が多いんです。この大きな公園でもあまり他の園のお散歩とは会いません。ここの池には蛙がいて、卵からオタマジャクシになり、蛙に成長するまでを子どもたちは四季を通じて観察できる。お尻ですべれる緩やかな坂も、走り回れる芝生もあるのに、小さくても園庭があるからと出かけない園が多いのは、もったいないですよね」

 取材に訪れた日も、クラスごとに公園の様々な場所で子どもたちは走り回っていた。丘の上の広場では、4、5歳児が木に登ったり、芝生に寝転んだり、落ちてる枝を取ってきて遊んだり、思い思いに楽しんでいる様子がうかがえた。冒頭の女の子のように、この園の子どもたちは花が甘い蜜を秘めていることや、寝転がると大地が暖かいことを身をもって知っている。この園には本当に個性豊かな子ども達がいて、みんな自分の楽しみ方を持っていた。


スイスイと木に登っていく子どもたち。先生は手を出さず、優しく見守る(左)。男の子たちはごろりと地面に横になって、クスクスと笑ってる。なんだか楽しそうだ(右)

 散らばって遊ぶ子どもたちの間に先生もいるが、監視しているというよりは静かに見守っている様子。何かを指示することも注意することもなく、子どもたちが遊ぶ様子を見守りながら、時々一緒に入って笑っている。この園では、先生もスタッフもみんな子どもたちからあだなで呼ばれている。「先生」ではなく、同じ目線で過ごせる仲間なのだ。

 木が茂り、池もあり、坂もある。危険とも言える部分もあるかもしれないが、先生たちは危機管理をする一方で「ダメ」とは決して言わない。こうした自然の中では、自分で能動的に考えて行動することが大事だと学んでほしいから。

 「『先生、何したらいいですか?』とすぐ聞く子どもたちにはしたくないのです。大人が中心の社会では、子どもは受動的に動かされていることが多い。でも、ココでは自分で能動的に考えて動く力を伸ばして欲しい。起伏ある自然の環境だからこその様々な予測不可能なことも経験しながら、子どもたちは学んでいくのです。子どもだからあちこちに走っていってしまうことも最初はあります。うちの園のスタッフには、危機管理などの研修は徹底して行っていますし、ミーティングもこまめに行っています。でも、子どもたちに上から教えることはしません。『見えない範囲に行くと先生は心配だよ』と伝えれば、自分で考えてちゃんと見える範囲で自由に遊ぶようになります」

 幼児クラスになると、自分たちで今日はどこで遊ぶかをみんなで相談して決めるという。みんなの意見が一致しないときも、子どもたちだけで話し合いながら結論を出していく力をつけていくという。

 「成長って心と体の両方で起こりますよね。夏でも冬でも自然の中で過ごすことで、自然治癒力や運動能力は高まっていると思います。でも、それは数値で図ろうとは思いません。心の成長も目に見えてすぐ結果が出るものではない。それでも、子どもが大きくなっていく上で大人としてどう関わっていくのか、どんな機会を与えてあげるのか、いつも子ども中心に考えていってあげれば子どもは良い方向に変わっていきます。森のようちえん活動の効果は、立証できないけど確証があるんです」


枝を見つけてきたり、走り回ったり。遊具はなくても自然の中での遊びは尽きない

 公園内には、ちょうど同じ系列の学童保育の小学生たちも遊びにきていた。昨今、公園で走り回る小学生をどのくらい見るだろうか。木の間を走り回る彼らを見て、なんだかなつかしい気持ちになった。彼らはみんなこの保育園の卒園生。すぐ近くで遊ぶ保育園児とも自然に一緒に声をかけて遊んでいた。

子どもの体にいい木材、食材を

 園内のフロアはすべて防腐・防カビ材無使用の椋材を使い、子どもたちが舐めたり触れたりしても安心。着替えや通園グッズが収納された作り付けの棚も釘や接着剤は一切使わずに組み立てられている。

 0~2歳児のもあな保育園は、壁や低い棚は可動式で、必要に応じて部屋のカタチや広さを帰ることができるようになっていた。普段は約20人の0、1歳児共有で使っている部屋と約15人の2歳児の部屋に分けているそう。定員に比べてると室内は広々して見えたが、子どものより良い成育環境を考えて、他園に比べると広さに対してゆとりのある定員数に抑えているという。