『ぐりとぐら』をはじめ、児童文学作家として世代を超えて親しまれる童話を多く送り出してきた中川李枝子さん。『いやいやえん』や『ぐりとぐら』(ともに福音館書店)などほとんどの作品は、保育士として保育園で働き、子育てをしながら生み出されたもの。児童文学作家、保育士、妻、母親という様々な顔を持って歩んできた中川さんが、ママやパパ達の悩みに答えます。今回の相談は「子どもをどう遊ばせればいいか」。意外な答えが返ってきました。さらに中川さんが子どもにどんな本を読んできたかも教えていただきました。

Q.1歳の娘にどう遊んであげればいいのか分からない

相談者 女性 看護師 32歳(娘:1歳6カ月)

 4月から1日4時間、週4回のパート勤務で仕事に復帰しました。まだまだ仕事と子育ての両立はできていませんが、仕事がいい切り替えとなり充実した子育ての日々を送っています。ただ、夫も毎日忙しく、平日は朝早くに出ていき帰宅はだいたい終電ごろ。今も育児全般は私がしています。子どもと2人きりの時間が長くなると、1歳の娘に何をして遊んであげればいいのか分からなくなってしまいます。保育士として子ども達を楽しませてきた中川さんは、どのようにお子さんと向き合っていたのでしょうか。子どもの上手な遊ばせ方を教えてください。

A.子どもは勝手に遊ぶし、大人以上に自分で楽しみを見つけるのが上手よ

──今回は、「子どもと2人きりの時間が長いと、何をして遊んであげればいいか分からなくなる」という、1歳のお子さんを持つママからの相談です。

 “遊んであげる”という考え方がおかしいのよ。大人のほうから遊んであげるなんてこと、子どもに対して失礼だと思うの。子どもはいつも勝手に遊んでいる。大人以上に楽しみを見つけるのが上手なはず。お母さんが仕事に復帰したということは、子どもを保育園に通わせているということでしょう。そこで色々なことを見つけてくると思います。

 私が保育士として勤めた「みどり保育園」は、「子だくさんの家の、にぎやかで愉快な子ども部屋」を理想としていました。子どもは自由に遊んでこそ学ぶし育つ、というのが園長の考えでした。

 私はこの方針に母親としても賛同していました。だから、自分の子どもにも、保育園に来る子ども達にも基本的に同じスタンスで接したんです。息子だからって変えることは一切しなかったし、実際、息子自身も2歳のときからみどり保育園のお友達と何でも一緒、同じでした。

 2歳児だって同世代の子どもと遊びたいのよ。最初はおのおのが隅のほうで好きなことをしている。最初から一緒に遊ぶことはしないけれど、他の子に関心をすごく持っているの。子どもが保育園や幼稚園に行く楽しみは、同じ年頃のお友達がたくさんいて、うちではできないような面白いことができるから。子ども同士で遊ぶのが楽しいのよね。

 ただ、大人は目を離しちゃいけない。みどり保育園では子ども達を勝手に遊ばせておくけれども、目は子ども達から片時も離しませんでした。しょっちゅうケンカするから。ケンカの理由のほとんどは誤解。自分の意見を相手に伝えること、しかもきちんと伝えることって難しいのよね。でも、子ども達は気持ちがすれ違ってケンカをすることで、相手の言わんとすることを受け止めるという、大変な勉強をしているんです。

 子どもは子ども同士の遊びの中で、社会性や協調性を身に付けて一人前になっていく。だから親はそれをきちんと見ていてやる。親が見ていてくれる安心感が子どもにとっての安全地帯になって、子どものコミュニティーの中で存分にやりたいようにやれるようになるのよね。子ども同士でケンカをして自分達では手に負えないとなれば、お母さんのところに飛んで帰ればいいのです。