――息子さんと自宅で2人きりになったとき、「ママ遊んで~」とお願いされることはなかったんですか?

 うちはあまりなかったわねぇ。甘えてくっついてくることはしょっちゅう。息子がベタベタしたいようなら好きにさせておきましたよ。ただ、どんなときも子どもを最優先にして、手とり足とり一緒に何かをすることはしなかった。子どもは絵を描いたり、一人でも何かしらやっているでしょう。

 ただ、夜寝るときに、子どもと一緒に本を読むことは習慣にしていました。

読むのは、子どもが読んでほしい本ではなく、私が好きな本

 私が仕事でできないときは、父親がやったり、家にお客さんが来ていたらその人がしてくれたり、毎晩必ず本を読んでいました。たくさん読みましたよ。1~2歳のころだったら『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』とか『3びきのくま』とか。3歳を過ぎてからは『ニルスのふしぎな旅』や『エルマーの冒険』とかね。

――『ニルスのふしぎな旅』は、小学生向けの読み物では? 童話としては長いですし、3歳の子に理解できますか?

 読んでもらう分には、3歳の子どもだって分かります。幼児だから幼児向けの本を読まないといけないわけじゃない。具体的かつ客観的に書かれた内容だったらちゃんと聞いているし、新聞記事や新聞のコラムだって、面白いものは子どもに読んでやっていました。大人の本も子どもの本も特に変わらないと思います。

 トルストイは優れた芸術の3条件として、「新鮮」「誠実」「明快」を挙げています。何度読んでも新しい発見や感動がある。心に残って成長の糧になる。そして相手に分かりやすく伝わる。これは音楽にも美術にも通じると思います。

 だから、何を読むかの基準は、この3条件を満たす私の好きなもの。子どもが読んでほしいものを読んでもらえるわけではないの(笑)。私がそれまでの人生で読んできていいと思ったもので、だいたいは文学系。『ドリトル先生』『たのしい川べ』『クマのプーさん』、グリム童話に岩波少年文庫に…。小学校に上がるまでに私がこれだけは子どもに読んでやりたいと思う本は、ほとんど読みました。息子は私が読まない、昆虫図鑑やプラモデルの作り方といったものは、仕方ないから自主的に読むようになっていました。

――『ドリトル先生』をはじめ、岩波少年文庫のシリーズは短くないストーリーです。数日に分けて読むんですか?

 そうそう、「今日はここでおしまい、続きは明日ね」という具合。子どもは長編も平気よ。翌日はその部分から読めばちゃんと分かっているの。「ラストはどうなるの?」なんて、途中でバカなことも聞かない。ストーリーの過程が面白いってことも、きちんと理解しているんです。そんな子どもの反応を見るのは私にとって勉強になり、繰り返し読むうちに、それを基に子ども達自身が遊びを考え出すのよね。

 それでやがては、自分だけで読むようになる。息子の場合は小学校に上がったとき、お昼にさんざん遊んでくるので、夜はすぐ眠くなる。ある日、「もうお母さん読まなくていい」と言われた(笑)。本人に言われたときにやめました。その後は、自分で好きな本を読むようになっていました。

 今のお母さん達は、子どもがしてほしいことをしてあげようとし過ぎているから悩んでしまうのかもしれないわね。子どもがやってほしいことをしてあげるのも、もちろん悪いことではないわよ。でも私は自分の都合第一で、あまりやらなかったわねぇ(笑)。

(取材・文/平山ゆりの)

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中川李枝子
中川李枝子 児童文学作家。札幌に生まれる。東京都世田谷区にあった「みどり保育園」に勤務しながら、創作を始める。1962年に出版された童話『いやいやえん』は、厚生大臣賞などを受賞。1963年に雑誌「母の友」に「たまご」という題名で掲載され、同年末に絵本として刊行された『ぐりとぐら』は、シリーズ化され、累計発行部数は2400万部。主な著書に『かえるのエルタ』『ももいろのきりん』など多数。戦争のため小学校を3回転校した体験をもとに、1971年、教科書向けに執筆した「くじらぐも」は現在も小学校1年生の国語教科書に掲載されている。映画『となりのトトロ』の主題歌「さんぽ」の作詞も手掛けた。

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