「帰ってきてください」の言葉も、にわかには信じがたく……

 コメンテーターとして出演していたテレビ番組も、花束で送っていただいた。「帰ってきてください」という言葉と共に。こうした言葉は本当にありがたい。と同時に、ギョーカイにありがちな「言葉だけ」となるケースも多々経験してきた私は、にわかに信じがたかった。

 だからこそ、出産後真っ先に声を掛けていただいた時には、心から嬉しかった。このご恩は一生忘れないだろう。育児のことを考えて、スケジュールも緩くなるように考えてくださった。つくづくありがたい。いつか恩返しできればなぁと思っている。

 そのほか、毎年来ていた仕事が、出産で一度断ったきり、翌年から来なくなったものはいくつかある。ありがたいことに、ナレーションや対談、連載の仕事は、まとめ収録、まとめ撮り、まとめ書きができるので、続けさせていただけた。ただ、私のためにスケジュール調整をしてもらう必要があり、そのお願いをするのは気が引けた。いつ、「ではこれで終わりということで」と言われるんじゃないかとドキドキだったから。

 続けられることになったら、どうしても出産直前に仕事を詰め込むことになり、大きなお腹を抱えてかなり忙しく働いてしまった。結果的に予定日より1カ月早く帝王切開することになったため、入院の1週間前まで仕事することになったのだった。対談に掲載する写真がず~っと妊婦のままで、読者から変に思われても、まぁ仕方がないということで。

 大学の仕事も、かなり色々配慮してもらった。通常1年の任期中、担当科目数が決められている。10月に産休を取ると、授業を休まなくてはならなくなり、結果、必要科目数を満たせないという状況が生じてしまう。単位が足りない学生みたいなものだ。学部長や学部の先生、人事の方などが就労規則を細かくチェックし、恐らく私が初めてだという、春から半期だけという契約をしていただけることになったのだ。

 その後1年半の期間を経て、また今年度も契約していただけることになった。何度も言うが、ありがたい。このような働き方もできるのだと、女子学生、もちろん男子学生にも示せることは、私にとっても大学にとっても価値あることだと思う。