女性が7割を占める職場で、働く女性がぶつかる課題を共有してきた

 松本社長は、リクルート在籍時には女性向け媒体を担当し、その後、女性向けマーケティング会社であるトレンダーズに転職した。いずれの職場も「約7割が女性」という環境。トレンダーズでは取締役という立場上、スタッフの面談も毎月のように行い、女性のキャリアに関する課題を目の当たりにしてきたという。

 「仕事をガンガン頑張ってきた女性も、20代後半になると悩み始めるんです。結婚や出産が現実に迫り、『これからどう働いていけばいいんだろう』と。出産と同時に、キャリアが断ち切られるという危機感を抱いている。この先も『バリバリ』モードでいくのか、割り切って『ゆっくり』モードでいくのか、決断しきれないんです。時短勤務など、育児をしながら仕事を続けていくための制度や環境は整いつつありますが、それでも、第一線に立ち続けるか、または、降りてしまうか、という2択しか与えられないケースが多いといえるでしょう」

「子ども」と「仕事」は、天秤にかけるものではない!

 「日経DUAL」でも、これまで「育児中の女性社員の葛藤」を取り上げてきた。キャリアを積み上げてきたのに、子育てをしながらだと責任ある仕事を任せてもらえず、補助的な作業ばかりでやりがいを感じられない――そんな不満や閉塞感を感じている女性は少なくない。

 そして、そんな子育て中の女性社員達の姿を見て、「予備軍」の女性達が出産に二の足を踏んでしまっているのが現状だ。

 「事業プランを組み立てるにあたり、40~50人ほどの女性と面談したんです。一流大学を出て一流企業に入社し、重要なポジションを手に入れた女性達が『今までのキャリアを捨てるくらいなら子どもを持つのはあきらめる』という言葉を口にするのを聞いて、がく然としました。まだ30歳前後の女性が、です。『仕事』と『子ども』なんて、そもそも天秤にかけるものではありません。どちらが大事か? どちらも大事です。片方を捨てたりあきらめたりするのではなくて、どうにかいいバランスに持っていけないか、と思いを巡らせました。例えば、『2年間は育児に重点を置き、勤務時間や年収を抑えて働く。とはいえ第一線から退くことなくキャリアを積み、育児が一段落したらまたフルタイム勤務で活躍する』ということはできないかと」