厚生労働省「雇用均等基本調査」(2012年調べ)によると、女性の育児休業取得率83.6%に対し、男性はわずか1.89%に留まっている。そんな中、全従業員数1万6097人(うち男性社員は1万3586人、割合86%/2013年3月現在)、ケミカル・繊維、住宅・建材、エレクトロニクス、ヘルスケアなど多岐にわたり展開する旭化成グループでは、業界でもいち早く、「男性の育児参加」を後押ししている。その取り組みについて、詳しく紹介する。

人事グループ長とダイバーシティ推進グループ長を兼務する田中英樹さん
人事グループ長とダイバーシティ推進グループ長を兼務する田中英樹さん

 旭化成グループでは、「人は企業において最大の財産である」という考えのもと、古くからワークライフバランスの向上に繋がるような対策に取り組んできた。1974年から導入した、育児休暇制度もそのひとつ。当初は女性社員を対象に、「子どもが1歳になるまで取得することができる休業制度」としていたが、92年には男性社員にもその対象を拡大した。だが、スタート時はなかなか取得する男性社員は少なかったという。

 「実は、制度導入より10年あまり経っても、男性の育児休業取得者数は、数人に留まっていました。そこで、なぜ育児休業を取得しないのか、どうすれば取得してもらえるのか、実際に現場の声を吸い上げて検討することにしたのです」。そう話すのは、旭化成株式会社の人財・労務部で人事グループ長およびダイバーシティ推進グループ長を務める田中英樹さんだ。

30歳前後の男性社員8人を集め、「育休を取らない本当の理由」を探る

 同グループでは、2005年に労使で30歳前後の男性社員8人を集め、「ニューパパプロジェクト」を発足。男性社員の育児休業取得が進まない理由と改善策について、2カ月間にわたって議論を重ねた。その結果、育児休業取得が進まない理由として、「配偶者が育児休業を取得する、または専業主婦の場合、男性が育児休業を取得する必要性が低いのではないか」「育児休業取得者率が低いなか、自分だけが取得してしまうと、昇進などに影響するのではないか」「育児休業を取得することで収入減となってしまうのではないか」といった声が挙がった。

 このような問題点を踏まえ、2006年には次のように育児休業制度を改定した。

【育児休業制度改定後の内容】
●子どもが1歳未満の場合
・ 休業の最初の5日間は有給とする
・ 2回まで休業期間の分割を可能とする(例えば、2日と3日などに分けて休むことができる)
・ 5日以内の短期休業取得の場合は、口頭の事前申請のみで取得できる
・ (男性社員は)出産予定日前日から取得可能
●配偶者要件廃止
・ 配偶者が常態で育児可能(無職・育児休業中など)でも取得可能