『だれも教えてくれなかった ほんとうは楽しい仕事&子育て両立ガイド』の共著者で、夜間保育&学童保育所を運営する認定NPO法人あっとほーむ代表の小栗ショウコさんと、松蔭大学・経営文化学部准教授の田中聖華さんに、ママの働き方について聞いていきます。今回は、前回記事「夜間保育というと、暗くて寂しいイメージですか?」「『女性の足を引っ張るのは女性』を経験 辞職を決意」に引き続き、小栗さんの話を紹介します。今回のテーマは、「あっとほーむを開設して16年経った今、以前と今のママ達の育児姿勢を比較して思うこと」です。

夜間保育への切実度は、ひと昔前のほうが大きかった

 NPO法人「あっとほーむ」の学童保育や夜間保育のサービスを利用する方の人数は、開設した16年前と変わっていません。しかし、夜間保育利用者の切迫具合は、ひと昔前のほうが大きかったように思います。

 今40代のママ達が10年ほど前に育児と仕事の両立に奮闘していたころは、時短などの社内制度が整っておらず、「夜間保育をしてくれる施設を見つけなければ、仕事を続けられない」と一生懸命に探して、あっとほーむにたどり着いていた感じです。

 一方、今は、社内の制度は整備されてきていますし、ベビーシッターやファミリーサポートといった民間・行政のサービスも充実してきました。あっとほーむを利用している30代のママ達は、そういう複数の選択肢を比較検討して、サービス内容や料金を考慮して納得した場合、あっとほーむを選んでくれているようです。

 私が日ごろ、仕事で接するママを見ていると、仕事に対する意欲を同じくらいもつ40代と30代のママを比較すると、30代のママのほうが「仕事を辞める」という選択肢を身近に感じているように見えます。「会社の制度を利用しよう」「夫婦でなんとかしよう」「祖父母の力を借りよう」…とまでは考えるけれど、「家族以外の誰かの手を借りてまで仕事を続けよう」と考える人は、今40代のママが10年前に思っていたよりも少ないように思えます。時短などの制度で支援を受けている分、これ以上、誰かに迷惑を掛けたくないという気持ちが生じているのかもしれません。

 確かに両立をサポートする社内外の制度は整ってきました。これらをママ達は堂々と活用していいんです。子どもの急な病気などで会社を休むなど、周りの人に迷惑を掛けることもあるでしょう。でも、仕事の効率を上げたり、子どもが成長するにつれてきっと挽回できます。

「時短制度を利用しなければ…」という呪縛に苦しむママは、意外と多い

 もう一つ、30代のママ達に日ごろから伝えているのは、「時短は必ず利用しなければならないというわけではない」ということです。時短を取得したとたん、業務内容が変わり、働きがいを失ってしまったと悩んでいる人は少なくありません。でも、「今は時短制度を使うけれど、○カ月後にはフルタイムに戻る」ということは、仕事や子どもの状況を考慮し、自分で決断してよいのです。一旦、フルタイムに戻る選択をしたなら、制度がなかった時代のママ達が頑張っていたように、夫婦や家族だけでなく、いろんな人の力を借りていく。好きな仕事ややりたいことをあきらめずに、子育てを楽しんでほしいと思います。