『だれも教えてくれなかった ほんとうは楽しい仕事&子育て両立ガイド』の共著者で、夜間保育&学童保育所を運営する認定NPO法人あっとほーむ代表の小栗ショウコさんと、松蔭大学・経営文化学部准教授の田中聖華さんに、ママの働き方について聞いていきます。今回は、前回記事「夜間保育というと、暗くて寂しいイメージですか?」に引き続き、あっとほーむを立ち上げた経緯について小栗さんに聞きます。

男女雇用機会均等法施行後の一般企業で男女の待遇差を痛感

 学童保育や夜間保育のサービスを提供する認定NPO法人「あっとほーむ」を立ち上げる以前、私は一般企業で10年弱、会社員として働いていました。短大の保育科を卒業したものの、保育園や幼稚園といった女性だけの職場で働く自分が想像できず、男性と同等の仕事に就きたいと思って、一般企業の総合職という道を選択したのです。学生時代までは男女関係なく、成績で評価されますよね。ちょうど男女雇用機会均等法が施行されたころでしたから、会社でも男女平等に評価されるだろうと思っていました。

 ところが、配属された職場で直面したのが、「女性は女性の仕事をこなしたら普通の仕事をさせてあげる」という古い考え方でした。毎日のお茶くみ、来客対応、机拭きなど…。私の後に入ってきた男性社員が、私がやらなければならなかった女性としての仕事を何一つさせられないまま、本来のやりがいある業務に就いている様子を見て耐えられなくなってしまいました。男性と女性でこれだけ差が出るということに悶々としました。このまま女性としてこの会社にいても成長は難しい。そんな思いが積み重なって退職を決意したのです。

 そもそも「女性の仕事を先にやりなさい」と私に言ったのは、10歳年上の女性社員でした。男性社員には理解ある人も多く、「そんなことをしなくてもいいよ」と思ってくれている方もいましたが、ベテラン女性社員に逆らえない面もあったようです。だから、私としては女性に足を引っ張られたという思いもありました。だからこそ、私自身は女性の味方になりたいと強く思うようになりました。

ゼロから一人で起業し、現在は夫婦で保育事業を運営

 会社を辞めた私は、資格も経験もさほどない30歳。他の会社に再就職しようかと思ったときに、夫が「別の会社でもまた同じことだよ。自分で何かやったら」と言ってくれたんです。

 特別、起業マインドがあったわけではありません。ただ、私の父は田舎で町工場をやっていました。中学の同級生だった夫はそれを知っているので、「お父さんの血を受け継いでいるんだから」と後押ししてくれました。「自分でやるという方法がある」と気付いた私は働くママ達の味方になるために、保育事業を立ち上げました。