(日経DUAL特選シリーズ/2014年5月収録記事を再掲載します。)

 初めまして。妊娠7カ月のライター、平山ゆりのです。

 昨年末に赤ちゃんを授かったことが分かり、恥ずかしながら何の準備も知識もなかった私は焦りました。「妊婦って何をしてよくて、何がダメなんだっけ?」と。慌ててネットで調べると大量の情報を得ることはできましたが、情報の真偽や医学的根拠が曖昧で、調べれば調べるほど心が乱れる始末…。

 この連載は、私が初めての妊娠で教えてほしいこと、気になっていることを識者に相談に行き、妊娠・出産に必要な知識を身に付けようというもの。私の個人的な疑問が出発点ですが、多くの妊婦さんの悩みや不安とそうズレていないと思います(たぶん…)。妊娠中の人、妊娠を計画し始めた人やそのパートナーなどに、少しでも役立てばうれしいです。

 今回レクチャーしていただいたのは、産婦人科医・宋美玄(そん・みひょん)先生。

 情報に振り回され不安になっていた時期、書店の妊娠&出産コーナーでいろんな本に目を通しました。その中で最も分かりやすく共感できたのが宋先生の著書。妊娠、出産、育児に関して「母親が自己犠牲を払って当然だ」との意識を前提に語られることが多い中、宋先生の「ママももっと自分自身に優しくていい」という言葉に救われる思いがしました。自身も2歳の娘を持つママであることも心強い。第1回となる今回は、「妊婦になるための準備」について聞いてきました!

 まず宋美玄さんのプロフィールを紹介します。

産婦人科専門医、性科学者。1976年、兵庫県神戸市生まれ。2001年に大阪大学医学部を卒業、大阪大学産婦人科に入局。周産期医療を中心に産婦人科医療に携わる。07年、川崎医科大学産婦人科講師に就任。University College Of London Hospitalに留学し胎児超音波を学ぶ。12年1月に第1子を出産。『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(ブックマン社)、『女医が教えるこれでいいのだ! 妊娠・出産』(ポプラ社)、『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』(メタモル出版)など、女性の性、妊娠、出産について積極的な啓蒙活動に励んでいる。

妊娠の準備をしている段階で予防接種を

――妊娠に気付いて日常生活を改めなきゃと、ネットの口コミサイトを見ていたら、やってはダメなことが多過ぎたり、人によって言うことが違っていたり…。ものすごく混乱しちゃったんです。

宋美玄(以下、宋) そうなんですよねぇ、情報を得たけれども正しいかどうか分からないことはパニックのもと。不確かな情報に振り回されるのは危険です。ソースのはっきりした情報かどうか、そのうえで実際に自分の身体を診てくれていて直接会える掛かり付けの医師や助産師に、納得できるまで聞くのが一番いい。いくら専門家でも、内診(産科・婦人科で日常的に行われる診察方法の一種。女性の膣から、指または専用の器具を挿入して、膣や子宮口の状態を確認する)も問診(医師が患者を診察する際、まず、本人や家族の病歴、現在の病気の経過や状況などを聞くこと)もせず、個別にアドバイスするのは無理ですからね。

――ただ、妊婦健診では、医師や助産師に遠慮をしてしまうことも少なくないんです。「こんなしょうもないことをいちいち聞くのもどうかな…」とか。個人差はあることは前提で、今回は、「妊婦がしていいこと、いけないこと」を整理したいと思います。

 本当はね、妊娠が分かってから何かを慌ててやめたり始めたりするのではなくて、妊娠を考え出したらしてほしいことがあります。