母子手帳にも書かれている葉酸の重要性

――続いて、「葉酸の摂取」について。私は妊娠初期に初めて、「葉酸」という言葉を知りました…。

 葉酸はビタミンB群の一種。葉酸が多く含まれている食品は、小松菜、ほうれん草、モロヘイヤ、春菊などの葉物野菜。いちご、アボカド、ブロッコリー、枝豆、納豆、肉のレバーなど。赤ちゃんのDNAが複製され正常に細胞分裂する際に必要な物質で、二分脊椎など神経管閉鎖障害(神経管と呼ばれる部分がうまく形成されないことによって起こる神経の障害)の発生など、赤ちゃんの先天的な病気発症リスクを減らすために重要な役割を果たします。健康な胎児の発育を助ける大切な栄養素なんです。

 赤ちゃんの身体の臓器がほとんど出来上がる妊娠初期(~12週まで)に必要で、それも「妊娠の2カ月前」から取らなければばあまり効果がありません。妊娠に気づいたときにはだいたいすでに3~4週目なので、そこから取り始めても、赤ちゃんへの先天的異常への予防という意味では効果が薄いんですよね。

――妊娠に気付いて初めて意識した私は遅かった…(涙)。だけど、頼れる身近な先輩であるはずの母親も、葉酸という言葉自体を知りませんでした。妊婦になって初めて聞く人は多いと思います!

 そうですね、日本で葉酸の重要性を説くようになったのはここ数年ですね。ほんの5年前までは、妊娠を希望する人が集まっているはずの不妊治療のクリニックの中にも、「葉酸って何?」というレベルのところがありました。

 2000年以降、当時の厚生省は「妊娠可能なすべての女性は葉酸を十分に取るように」と呼びかけるようになり、2002年以降は母子手帳にも書かれています。ただ、欧米ではとっくの昔から葉酸の重要性は妊婦の常識で、摂取を勧告しています。葉酸を取ることで胎児の異常は減るし、摂取を勧めるデータはいくつも出ているんですよ。

――確かに、母子手帳に「妊娠中の葉酸摂取について」という項目はあります。だけど母子手帳を受け取れるのは、妊娠8週~12週ごろ。それじゃ遅いわけですよね?

 先ほど話した風疹の予防接種もそうですが、国にとって“予防”の概念は薄いんですよ。

葉酸摂取の重要性は母子手帳にも書かれています
葉酸摂取の重要性は母子手帳にも書かれています