保育士は親代わりにはなれない。「教えて、見守る」のが仕事

―― では、親と保育士の役割分担って?

加藤 親の基本の役割は、「甘えさせ、愛情をかけ、見守ること」。ダメなことはダメって伝えるときに感情的になってもいいんです。それが人間ですから。

―― 保育士さんが感情的になることはないのですか?

加藤 基本的には怒っちゃいけませんよね。保育士の役割は「教えて、見守る」ですから。でも、幼児になって、物事がよく分かってくるようになると私達も感情的になることがありますよ。ただし、「憎しみ」を表現するのではなく、「教える」ためです。
 「先生、そういう意地悪は絶対好きじゃないからね!」とか。すると子どもも「普段は穏やかな先生が、あんなに怒るなんて、僕は悪いことをしてしまったんだ」と思ってくれるんです。でも、言い過ぎたと思ったら、お昼寝でトントンしながら謝ることもありますよ。「先生、さっきは言い過ぎてしまってごめんね」って。そこは親と同じですね(笑)。

広田 私達はプロとして感情的にならないように自分をコントロールしている部分があります。でも、子ども達には「人間らしく」育ってほしい。だから、保護者に感情の部分を見せてもらうことも大事だと思うんです。感情をもってでしか、伝わらないこともありますから。

佐伯 だからこそ、保育士側も様々な個性や性格の人がいたほうがいいのだろうなと思います。

保育士が親の本音を代弁することもできる。子どもは意外と寛容なもの

―― 保育園のお迎え時は、特に自分の疲れとなかなか準備してくれない子どもの間でイライラしてしまいます。対策はありますか?

加藤 お父さんもお母さんも仕事で疲れて、焦っていてつらいですよね。でも、そのまま家に帰ってしまうと僕らは助けてあげられないので、園ではなるべく手助けするようにしています。子どもが泣いてたら「どうしたの?」と声を掛けて「靴下履きたくなかったの?」などと聞いてみます。「でも、ママは今日忙しくて早く帰らなきゃいけないんだって。お手伝いしようね」と声を掛けつつ、お母さんにも「大変ですね」と言ったり。すると、親のほうも落ち着くこともあります。

広田 親の気持ちをお子さんに伝えてあげたりします。「お母さんね、今日疲れちゃったんだって」とか。そうしたら、子どもも協力しようって思うんですよ。

加藤 お迎えも、連絡帳記入も疲れますよね。いいんですよ、「疲れた」って保育士に言っても。言うだけでラクになることだってあります。僕も子どもがいて、連絡帳に「今日は疲れました」とか素直に書いてしまうほうですから。

 「お母さん疲れてるんだから、今日はお弁当買って帰って、それ食べてお風呂入って寝ちゃえば! 今日はそれでいいじゃない」って声を掛けるときもあります。疲れてる保護者に限って、帰ってからちゃんと洗濯して…とかいう人が多いんです。出前取ったって、外食したって、なんだっていいんです。疲れは週末やちょっとしたことでリセットできることもありますから。