「こちらの事情分かってる?」VS「なんでいつも私ばっかり…」

 しかし、相手のことを自分のことのように想像して思いやりを持つってなかなか難しいものなんですよね。子育て中のメンバーは、「子どもが熱を出した! 申し訳ないけれど、今日も早く帰らないといけない…」と肩身の狭い思いをしながらも、同僚に対して「また打ち合わせが18時に設定されている…。保育園に延長申請しても間に合わなさそう。こちらの事情、本当に分かってくれているのかな…」と胸の中でプスプスしていたり。

 一方で、いつも“マイナス1”をフォローする側に回るシングル社員は、内心では「どうして、私がいつも助けなきゃいけないの? おかげで仕事が増えて残業ばっかり! 日中は駆けずり回っているから打ち合わせも遅くなっちゃうのよ」と不満を抱えていたり。

「いつも私達が助けてばかりなのよねぇ…」小さな衝突が亀裂の始まり
「いつも私達が助けてばかりなのよねぇ…」小さな衝突が亀裂の始まり

 こういった気持ちの衝突が重なっていくと、育児中のメンバーのグループとそれ以外のメンバーのグループとの間に亀裂が生じ、「子育て社員VSシングル社員」という深い溝ができてしまいます。

 お互いの事情に配慮したり、感謝をしたりするカルチャーが育たず、お互いに権利の主張をして衝突し合う、よろしくない雰囲気が漂い始めます。そうなると、チーム全体の士気もみるみる低下。放っておくと、かなりヤバイです。見て見ぬふりをしていたボス、結構いるんじゃないでしょうか?

 レベルの違いはあると思いますが、全国のほとんどの職場でこの問題は生じていると僕は思います。溝は浅いうちに埋めるのが鉄則です。で、この溝埋めへの対処こそ、イクボスの“腕の見せどころ”だと心得ましょう。

溝を埋めるカギは、両派のキーパーソンに同時に話を聞くこと

 僕だったらどうするか。まず、両派のキーパーソンを一緒に呼び出して、飯を食います。メンバー全員を巻き込むのは難しいので、それぞれのグループで影響力の大きいメンバーを1人ずつ呼び出して一緒に話すんです。

 この“一緒に”というのがポイント。ありがちなのは、個別に1人ずつ呼び出す方法ですが、どっちが先だとかでかえって面倒になるし、当事者同士の話し合いにならないので回りくどい。結局、愚痴を聞くだけで解決に至らない場合が多い。最初に「両者から同時に話を聞く」という姿勢をボスが見せることで、「フェアでオープン」であることを示すことができるというわけ。

 話は率直にするのがいいと思います。「なんかさ、最近みんなの雰囲気がおかしくなっていると思わない? 君達がお互いに不満を持っているのも分かる。でも、お互いに譲れない事情もあるわけだし、腹割って話す必要があると思うんだ。オレも上司として何とかしたいと思っているからさ、まずは、みんなの状況もよく知っている二人の思っていることを聞かせてよ」と切り出します。

 このとき、「今日の話はここだけの話。オレだけでとどめておくから」と念を押すことを忘れずに。部下が安心して本音を言いやすくなります。そうやって、まず、不満を吐き出し、相手に自分の思いを主張できる機会を用意することが大切です。