ジャズでもロックでも親が好きな曲を聴かせることが大切

──親子で楽しむのに向いているクラシックの曲ってどんなものでしょうか? お薦めの作曲家や演奏家はありますか?

 とくにありません。その人自身に響くことが大切だと思います。

 子ども向けのコンサートだと曲目も決まってくるんですよね。「小犬のワルツ」や「トルコ行進曲」など。ただ、私は「子どもが聞いてそんなに楽しいかな」とも思うことがあります。

 確かに5分以上の曲だと集中力は持たないでしょうし、あまり短過ぎてもダメなことがある。そういう子どもの視点で考えることは大切だと思います。

 ただその一方で、長い曲でも子どもはすごく感動することもあるのです。私は子どもの頃、「はげ山の一夜」を聞いて、すごい衝撃を受けました。管楽器の迫力に圧倒され、すぐに虜となりました。そういうこともあると思うんですよね。

──あまり神経質に考えなくてもいいということですね。

 そうです。ジャンルにこだわらなくてもいいと思いますね。ディズニーや今回演奏した『となりのトトロ』でもいい。クラシックにこだわらず、「音楽」という大きなくくりで、音を楽しませることを重視すればいいのではないでしょうか。

 ポピュラーミュージックでもピアノを弾く演奏家は多いですし、クラシックを聴いているから教養が高くなると言うことでもない。ジャズでもロックでも、親が楽しめる音楽を聴けばいいと思いますよ。親が音楽を楽しめば、子どもも音楽を楽しんでくれると思います。やはり親の影響が一番一番大きいので、こどもに与える事よりも、親御さん自身が日頃から聴く事が大事だと思います。

最後の「猫バス」では作曲家の轟千尋さんと連弾を披露。演奏中に位置を変えながらピアノを弾き続ける轟さんに子ども達も大喜び
最後の「猫バス」では作曲家の轟千尋さんと連弾を披露。演奏中に位置を変えながらピアノを弾き続ける轟さんに子ども達も大喜び

身近なところでいいから「生の音」を聴かせてあげて

 もう一つ、音楽を好きになってもらうには、やっぱり生の音を聞かせるのが一番だと思います。CDは、生の音を聴いた後に聴くもので、やっぱりコンサートに足を運んで、実際の楽器の音をまず聴いてみることが大事です。

 ただ子ども向けではないコンサートは、やはり小学生以上ではないとなかなか難しいと思います。身近なホールや、近くの公民館でもいいので、無理なく行けるところから始めた方がいいと思いますね。

──まずは身近なところから、ですか。

 回数を重ねることが重要なのです。身近なところから入って、回数を重ねていくと「もっといいものを聴きたい」「このコンサートに行きたい」と絶対になる。子どもだけでなく大人もそうです。1年に1回、有名な人の演奏を聴く、というよりは、頻繁に行く機会を持つ方がいいと思います。

 高級レストランへ行くのと同じ。料理を楽しむにはテーブルマナーを覚えなくてはいけないけど、でも年に1回食事をするだけでは、いつまで経っても身に付かない。多少カジュアルなお店でも、ナイフとフォークを使う機会を多くすれば慣れていくし、楽しみ方も分かってくると思います。