時間の価値は、とらえ方次第で高くもなるし、低くもなる。

 校長になっていないころ、ママ友が「最近、ダンナが保育園への送りをしてそのまま出勤してくれるようになった。誰もいない家で、コーヒーを飲んでから出かけられる10分がとても嬉しいのよねぇ」と言っていた。今年の私は、少しわかる。引っ越して通勤時間が15分増えた。その代わり、空いた路線なので座れるようになった。「仕事の自分」と、「家庭の自分」のすき間時間。好きな本を読んでリセットする。

 また、ありとあらゆる時間を前向きに楽しむのも、時間の価値を上げる。

 この1年、地域やPTA行事に参加することで、「家族の時間」のバリエーションが増えた。娘はお兄さん・お姉さんが遊んでくれる、敷津小学校が大好きだ。最初、夫はいきなり「校長先生の旦那さん」になってしまい、大いに戸惑っていた。しかし、保育園で鍛えたせいかお母さん達の間に入るのは抵抗なく、PTAの懇親会では児童の妹を抱っこしている夫がいた。

今宮戎、通称「えべっさん」は校区に隣接しているのでPTAで巡視に行く。学校目の前の木津市場で行われる「献鯛式」には校長として招かれ、貴重な体験をした
今宮戎、通称「えべっさん」は校区に隣接しているのでPTAで巡視に行く。学校目の前の木津市場で行われる「献鯛式」には校長として招かれ、貴重な体験をした

 1年近く過ごし、敷津小校区は家族にとっても居場所の一つになっている。今宮戎の時には、縁日好きの夫が夜に2日続けて通ってきた。金曜日、「保育園にお迎えに行って、お風呂セット積んで迎えに来て!」と、家族で学校の目の前の木津市場に集合することがある。「太平の湯」というスーパー銭湯があり、市場直結なので食事もおいしい。児童とばったり出会うこともある。町を歩くと、地域の方から「校長先生!」と声がかかる。

 「お母ちゃんの学校に行きたいなぁ」

 「うーん、それは無理やなぁ」

 進学先は、1年生が5クラス。人数が多い。この街中の小さな学校は、日本の学校が持つ課題が凝縮されてはいるけれど、子ども全員の顔がわかる。

 「自分の子どもを行かせたい学校」。

 私は、自信を持ってそう言える。それは単純なキレイ事ではなく、身に迫っている学童保育問題を思うと、「ええなぁ、敷津の子!6年生までめっちゃ学童で遊んでるやん」と考えてしまう。

 頭を抱えながらの年度末、共働き向けの子育て支援は小学生にも必要だ!と、声を大にしてアピールしておく。

[本記事は日経DUAL編集部が2014年3月14日付日本経済新聞電子版に寄稿した記事を再構成しました]