会社を辞めて、11年。振り返ればあっという間だった。「やっぱり仕事をしたい。企業に属してバリバリ働きたい」と思ったことは、一度や二度ではない。でも、それ以上に、目の前でグングンと成長していく息子の姿を見るのが楽しく、やりがいにもなっていた。「仕事はいつでもできる。でも子育てはやり直しが効かない真剣勝負。今はこれに集中したい!」とその都度、自分の気持ちを再確認した。

 妻の仕事も軌道に乗り、時間の融通も効くようになった。少しでも空き時間ができると、妻が料理を作ったり掃除をしたりと、積極的に家事をこなす。朝ごはんの後、みんなで散歩をしたり、休みの日に三人で出かける機会も増えた。

 夫婦の愛情を一身に受けてスクスク成長した息子は、どこに出しても恥ずかしくない、素直でいい子に育ったと思う。

自分自身「やりたい」と思ってやってきたから続けられた主夫業

 来年は小学校を卒業し、いよいよ中学生。授業、部活、塾などで、家にいる時間も少しずつ短くなるだろう。それを機に、そろそろ専業主夫を卒業して、息子がいない9時5時に働きに出ようと思っている。「妻と息子のお陰で、本当に充実した子育て期間を過ごすことができた」と、橋本さんは笑みを浮かべた。

 「ここまで主夫業を続けて来られたのは、やらされているのではく、やりたいと思ってやってきたから。妻に代わって僕が家事や子育てを“してあげている”と思ったら、とたんにやらされ仕事になってしまい、主夫業がイヤになっていたかもしれない。でも、僕の場合は決してそうではない。息子の成長、妻の笑顔を見たいと思った僕が、自発的に行動して来た結果の11年なんだと、心からそう思っています」