仕事と家事で忙しいDUAL世代にとって、「片付け」は住まいの中でも最大級の問題と言える。「収納が少なくて散らかり放題」「家具を置いたら部屋が狭くなった」など、収納に関する悩みは尽きない。だが、そんな頭痛の種を根本から解決してくれる住まいづくりのポイントがあるという。日ごろから住まいにまつわる様々な問題を研究している、積水ハウス総合住宅研究所の河崎由美子課長に聞いた。

リビング、玄関、寝室の3カ所が収納満足度のポイント

「収納に関しては、興味深いデータがあります」と、グラフを示す河崎氏。収納率と収納満足度の関係を示したそのグラフは、収納率が低いうちは数値が上がるほど満足度もアップするという、右肩上がりのデータになっている。だが、収納率が14%ほどのところから急に満足度が上がらなくなり、あとはほぼ横ばい状態だ。

積水ハウス総合住宅研究所 住生活研究室の河崎由美子課長。収納スペースは「広さ」ではなく「場所」と強調する
積水ハウス総合住宅研究所 住生活研究室の河崎由美子課長。収納スペースは「広さ」ではなく「場所」と強調する

「家を建てた人の不満点で収納はワースト3に挙げられる項目の一つ。収納の面積は広いほど満足度が高まりますが、ある一定の割合を超えるといくら収納を増やしても満足度は高まりません。つまり収納は量を増やすだけでなく、設置する場所や形状によっても満足度が大きく左右されるということなのです」

 そこで河崎さん達が着目したのが、家の中でも最もモノが散らかりやすいリビングと玄関、寝室の3カ所だった。研究の結果、この3カ所にクロークを設置することが最も有効であることが判明。リビングのクローク「リビクロ」、玄関のクローク「シュークロ」、寝室のクローク「シンクロ」――名付けて「収納3姉妹」と命名された。

リビングに家具を置くとせっかくの広さが台無しに

「なかでもリビングの収納が最も重要です。爪切りや鉛筆、洋服や子どもの塾の道具、携帯電話におもちゃなどなど……リビングは家の中で最もモノがあふれている場所にもかかわらず、これまでは収納がほとんどありませんでしたから」

 同社が部屋別に収納の不満度についてアンケートを取ると、常にリビングが高得点を「獲得」するという。しかしリビングに収納を作るという計画は、これまであまり提案することが少なかった。リビングはなるべく開放的なスペースを確保し、収納は置き家具で済ませるという考え方が主流だったからだ。

「こまごまと家具を置くとその分、リビングの面積が狭くなり、壁面積の少ないごちゃごちゃした空間になりがちです。それならばいっそ、壁を1メートルほど前に出して、その後ろを収納空間として“リビングクローク”を設ければスッキリとした空間がつくれると考えました」

使う場所の近くに収納の指定席を確保することが大切

京都府木津川市にある<a href="http://www.sekisuihouse.com/nattoku/koubou/" target="_blank">総合住宅研究所 納得工房</a>で見られるリビクロ。棚の幅なども工夫されていて、効率よく物が収納できる
京都府木津川市にある総合住宅研究所 納得工房で見られるリビクロ。棚の幅なども工夫されていて、効率よく物が収納できる

 リビングにあふれるモノを片付けるにはどのくらいの収納量が必要なのか、と心配になるかもしれない。だが意外にも、「1畳程度のスペースがあれば十分」なことが多いという。

「リビングクロークの中は二方または三方の壁に棚を設置します。棚の奥行きが深いと奥に置いた物が見えなくなるので、なるべく浅い棚にするのがポイント。そこでリビクロでは複数の奥行きの棚板を活用します。クロークに一歩入ったらすべてのモノが見える、家族みんなに分かりやすい一覧性が重要なのです」

 収納の仕方にも工夫を施した。棚を上・中・下段に分類し、年に数回しか出し入れしない季節モノは上段に、よく使うモノは視線の届きやすい中段に、小さい子どもが使うものは下段にしまうといった具合だ。

「収納は使う場所との距離が短いことが大切です。爪切りとかハサミとか、遠くだと取りに行くのもしまうのもおっくうになります。使う場所の近くに使うモノの指定席を確保して、使ったらすぐに指定席に戻すことで、出しっ放しによるモノの滞留を防げます。1階で使う加湿器やスーツケースなどの大きなモノも、できるだけ1階にしまう場所を作ることが大切です」