「ピグマキッズくらぶ」を用いた学習指導に関しては、SAPIX・代ゼミグループが荻窪、白金高輪の2エリアで展開している学童保育「ピグマキッズ」のノウハウを活用。株式会社日本入試センターでピグマキッズ事業部長を務める安田秀明氏は、「ピグマキッズはもう一つの我が家としての居心地のよさがある保育と教育の両面を持つ場所」と説明する。

日本入試センターでピグマキッズ事業部長を務める安田秀明氏
日本入試センターでピグマキッズ事業部長を務める安田秀明氏

 ここでの学習指導の特色は、所定の研修を修了した「シーダー(種をまく人)」と呼ばれる女性指導員が子どもに付き添うこと。「ピグマキッズくらぶ」のみならず、学校の宿題のサポートも行う。安田氏は「シーダーの役割は正解を教えることではなく、考え方のヒントを与え、子ども自身に“気づかせる”こと」と話す。シーダーは幼稚園教諭や保育士経験者のほか、子育て経験がある人も多く、「母親」代わりの役割も果たしているという。

 家庭で取り組む通信教材として開発された「ピグマキッズくらぶ」は保護者用の学習指導書が充実していて、出題意図や指導のポイントが詳しく解説されている。ただ、時間的な制約がある共働きの親には、ここに書かれている通りの指導をすることは難しいかもしれない。

 「通信教育の教材をいかに有効に活用してもらうかを考えたとき、学童保育の機能を果たしながらSAPIXメソッドに触れられる場を設けたいという話になり、それがピグマキッズの誕生につながった。シーダーが直接指導する場ができたことで、子どもたちがどこでつまずきやすいのかといったリアルな反応がわかり、教材内容の改良にも役立っている」と安田氏は話す。

先取り学習ではなく、地頭の養成をめざす

SAPIX・代ゼミグループ共同代表の高宮敏郎氏
SAPIX・代ゼミグループ共同代表の高宮敏郎氏

 SAPIX小学部では、小学1年生から週1日のコースを開講している。それにもかかわらず、新たに学童保育を始めた理由をSAPIX・代ゼミグループ共同代表の高宮敏郎氏は、「小学1年生の子どもが電車に長時間乗って進学教室のSAPIXまで通うのは難しい場合もある。そこで、“進学教室のSAPIX”“通信教育のピグマキッズくらぶ”“通信教材をシーダーが指導するピグマキッズ”といった3つの選択肢を用意したが、いずれも先取り学習ではなく、すべての学習の基礎となる思考力・記述力・表現力といった地頭の養成を重視しているという根っこの部分は同じ」と説明する。

 学童保育事業は高収益が見込めるビジネスモデルではないと言われており、学童卒業後にSAPIXへの通塾を促すような中学受験むけの早期教育は行わないのであれば、学童保育への参入が通塾生の増加につながるとも言い切れない。ただ、低学年のうちからSAPIXメソッドに親しむことで“SAPIXのファン”となる家庭を増やせる可能性はありそうだ。