子育てをする能力と、様々な子どもを集団で保育(教育)する能力は異なる

 「保育は子育て経験者で十分」と考える人は、「子育てはみんなやってることだから誰でもできる」と思っているかもしれません。でも、自分の子どもを育てた経験と、様々な個性や体質の子どもを集団で保育(教育)するために求められる能力はまったく異なるものです。

 保育士資格を取るためには、保育の理論のほか、教育の理論、子どもの心身の発達に関する専門知識(発達心理、保健、栄養)、福祉などについて学ばなくてはなりません。養成校では実習も必須です。こうして、基礎的な知識を身に付けた人材が、保育士としての職業意識や責任感、意欲をもって現場に入り、経験を積むことによって、安全で質の高い保育を提供できるようになるのです。

 保育は乳幼児教育も含んでいます。発達が著しく、その個人差も大きく、人格形成期とも言われる乳幼児期の教育は、この時期の発達過程を理解した専門職が、それぞれの発達に合わせて、遊び、保育者のかかわり方、集団のあり方を工夫し、子どもが生き生きと活動できる環境をつくることによって可能になります。そのために、保育士は、保育の計画を立て、記録をとり、保育内容を練るとともに、保護者ともコミュニケーションをとっていきます。

 こういった保育士の隠れた仕事や専門性の発揮は、保護者にも見えにくいものですが、理解しておかなくてはいけないことだと思います。