でも、我が子が夜の8時9時までお弁当を持って勉強しているのを見るにつけ、これは絶対に間違っているという思いが強くなりました。子ども時代は大人になってからはやり直せないのに、すでに残業する大人みたいな暮らしぶり。受験に向いているタイプの子ならばやり甲斐を感じるかも知れないけれど、でもさ、やっぱり子どもはぼうっとするのがいちばんの勉強だからね。

ぼうっと損得抜きで世界や大人と向き合うこと。それこそ子どもの特権

 ぼうっと空を見て、ぼうっと走って、ぼうっと本を読んで、ぼうっと世界と出会うこと。無心に、出会い頭に、損得抜きで世界と向き合うことは、大人には出来ない。その子どもの特権を取り上げられて大人になると、後から実に厄介なことになるのです。

 私もそうでした。母の過干渉で15歳で摂食障害になり、33歳で不安障害を発症してからカウンセリングと投薬を受け、症状が落ち着いた後も7年かかってやっと家族との関係を自分の中で整理できた。歪んだ世界観を正すために子ども時代をやり直すのは、とても大変なことなのです。

 息子たちを見ると、器用に受験をこなすよりは、興味のあることに集中するタイプ。もしも、兄弟2人ともゆるめの私立に通わせると年間いくらかかるだろう? 学費と、長期の休みごとに行かせる海外研修費、英語の家庭教師の授業料、部活代に・・・おおよその総額を算出したら、ねえねえこれって、一家で海外に引っ越せちゃう金額じゃない? と気がつきました。