教育施設だけでなくコミュニティ一体となって、芸術を通した幼児教育をするメソッドで世界的に有名なイタリアのレッジョ・エミリア・アプローチ。その教育方針と日本の良さを融合させた保育を行う認可保育園がある。幼児から創作活動を行う“プロジェクト”を通して対話力を養う、その噂の園を訪問した。

芸術教育を重視したレッジョ・エミリア方式を導入

 園内に入った瞬間、その独創的な建物デザインに驚く。ぐるりと円形に教室が配置された中心のホールが3階までの吹き抜けになっており、そこをなだらかな螺旋のスロープが続く。階段ではなく、このスロープを通って子どもたちは園内を行き来する。存在感のあるスロープだが圧迫感というより、歓迎されているような気分になるから不思議だ。薄い桃色や緑色が使われている建物全体の優しい色合いが、気持ちを穏やかにさせてくれる。

建物の中心の吹き抜けには淡いグリーンのスロープ。3階までの部屋をすべてつないでいる
建物の中心の吹き抜けには淡いグリーンのスロープ。3階までの部屋をすべてつないでいる

 「スロープを通じて、すべての部屋がつながっているんです。子どもたちが自由に自分の行きたい場所に行け、様々な年齢の子ども同士がつながっている場所。子どもたちはこのスロープが大好きで、靴下ですす~っと滑り降りてくる子もいます(笑)。『このスロープとホールのスペースを教室にすれば、もっと人数を入れられたのに』と言われる方もいらっしゃいますが、子どもを詰め込んでいては意味がないのです。子どもたちがのびのびと過ごせる場所であってほしいと思っています」

 東京・新宿区にある「オルト保育園」。オルトとはイタリア語で“菜園”の意味。

新宿区の認可保育園だが、以前同じ場所にあった区立保育園の老朽化に伴い新園の開設と運営を譲り受けた社会福祉法人新栄会が委託されて行っている民営認可園。開園当初から園長を務め、昨年から特任研究員として保育園の運営に携わっている戸塚陽子さんと主任保育士の山田寿江さんが案内してくれた。